短編裏BL

□愛したい人
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余裕なんか本当に無かった。

可愛いだとか好きだとか軽く伝えてはトッキーの反応を楽しむだけのつもりだったのに。
可愛いだとか好きだとか結局ぼくの本気で、それを伝えれば、伝えられればこうなるのは目に見えていたんだ。

折角作ってくれたトッキーの手作り料理。
ごめんね、食べるのはもう少し遅くなりそうだ。



「んっ…ぅ…ぁ……」

「トッキー…我慢、しないで…」



ソファの上に寝ていたトッキーの上に軽く覆い被さってはトッキーの服を少しずつ剥いでいく。
平らな素肌に赤い印をいくつも落としては、胸の上で主張する二つの突起に指先で引っ掻いては擦りあげる。
それだけでトッキーの下半身は疼くようで、その昂り始めるトッキーのそれを左足の膝で軽く衣服越しに擦ってみる。


「ぁっ…やだっ、寿さ…」

「…ん〜…?何が嫌なのかよくわからないなぁ。」

「…いっ…意地悪ですっ…っぁ、んっ…!」

「トッキーが気持ち良いことしかしてないんだから、意地悪じゃないはずなんだけどな〜」


そういう言葉がトッキーを辱しめていて、それが意地悪なんだって解ってる。
解っているのに何でだろうね。
トッキーを辱しめたいのかな。

だって、照れちゃうトッキー、本当に可愛いんだ。


「……ねぇ、トッキー…好きだよ…」

「っ…今それ言うなんて…狡、い…ですよ…っ…」

「…ははっ…そうかな…でも、すごく…言いたくなったんだ。」



何度も何度もトッキーの髪にキスを落とす。
何でこんなに愛しく感じるのか解らないけれど、今日は無性にトッキーを愛したくて堪らなかった。

別に、愛人がいるわけじゃないけれど。
多分、さっきまで仕事でしていた演技のせいだ。
愛人役は結局仮初めでしか愛されなくて、でも、愛人は本気で相手を好きだったりする可能性もあって。
一方通行な愛、でもそれって結局愛せない気がする。

仕事を引きずりすぎてて自分でも嫌だったけれど、それでもそれを含めてトッキーを愛したかったんだ。



「…トッキー…お願い…好きって、聞かせて…」


ぼくは既にトッキーの下半身に手を伸ばしては、そっと中に指を忍び込ませた。

苦痛に顔を歪める彼。
それでもぼくのその言葉に譫言のように応えてくれた。


「んっ…ぁ…寿、さんっ…好き…ですっ…私は…貴方がっ……」






二人の『好き』があって、初めて愛は完成するように思えた。
あぁ…愛するって、こういうことなのかな、なんて幸せを実感したら、それが身体にも顕著に表れた。



「…好きだよ……トキヤ…」


「っ、ぇ…あっ…名、前っ…んぁっ…!」


ぼくが名前を呼んだことも、覚えてないぐらい、今日は君を愛したい。
それで、君からの愛を貰いたい。

繋がったそこは元々一つだったかのようで、そんなの普通、女の子なはずなんだけど、それでもそんな錯覚に陥るぐらい、トッキーのそこはぼくを締め付けてはぴったりと結合するようだった。


「っあ、っ…寿、さっ……!」

「…名前っ…呼んでよ…ほら……ね、っ…?」

「…ぁ…っ嶺、二…さ、んっ…っ…?」



恥ずかしそうに、少し申し訳なさそうに、それでも呼んでくれたぼくの名前。

…トッキーの口から「嶺二さん」だなんて、正直笑えない。

自分から名前で呼んでなんて言ったのにね。

ほんと…余裕ないや。




「…好きですっ…嶺二さっ…ん…!」


「……ぼくも…君が好きだよ……」



あだ名をつけるのは、それなりに仕事上のみで親しくなれたら良いなと思うから。
だからあえて名前は呼ばない。

でも…君なら名前で呼びたい。

そう思えるんだ。


トキヤ、愛してるんだ、君を。

だから…おにーさん、余裕ないけれど…これからもおにーさんぶらせてね。




─END─
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