短編裏BL
□愛したい人
2ページ/2ページ
余裕なんか本当に無かった。
可愛いだとか好きだとか軽く伝えてはトッキーの反応を楽しむだけのつもりだったのに。
可愛いだとか好きだとか結局ぼくの本気で、それを伝えれば、伝えられればこうなるのは目に見えていたんだ。
折角作ってくれたトッキーの手作り料理。
ごめんね、食べるのはもう少し遅くなりそうだ。
「んっ…ぅ…ぁ……」
「トッキー…我慢、しないで…」
ソファの上に寝ていたトッキーの上に軽く覆い被さってはトッキーの服を少しずつ剥いでいく。
平らな素肌に赤い印をいくつも落としては、胸の上で主張する二つの突起に指先で引っ掻いては擦りあげる。
それだけでトッキーの下半身は疼くようで、その昂り始めるトッキーのそれを左足の膝で軽く衣服越しに擦ってみる。
「ぁっ…やだっ、寿さ…」
「…ん〜…?何が嫌なのかよくわからないなぁ。」
「…いっ…意地悪ですっ…っぁ、んっ…!」
「トッキーが気持ち良いことしかしてないんだから、意地悪じゃないはずなんだけどな〜」
そういう言葉がトッキーを辱しめていて、それが意地悪なんだって解ってる。
解っているのに何でだろうね。
トッキーを辱しめたいのかな。
だって、照れちゃうトッキー、本当に可愛いんだ。
「……ねぇ、トッキー…好きだよ…」
「っ…今それ言うなんて…狡、い…ですよ…っ…」
「…ははっ…そうかな…でも、すごく…言いたくなったんだ。」
何度も何度もトッキーの髪にキスを落とす。
何でこんなに愛しく感じるのか解らないけれど、今日は無性にトッキーを愛したくて堪らなかった。
別に、愛人がいるわけじゃないけれど。
多分、さっきまで仕事でしていた演技のせいだ。
愛人役は結局仮初めでしか愛されなくて、でも、愛人は本気で相手を好きだったりする可能性もあって。
一方通行な愛、でもそれって結局愛せない気がする。
仕事を引きずりすぎてて自分でも嫌だったけれど、それでもそれを含めてトッキーを愛したかったんだ。
「…トッキー…お願い…好きって、聞かせて…」
ぼくは既にトッキーの下半身に手を伸ばしては、そっと中に指を忍び込ませた。
苦痛に顔を歪める彼。
それでもぼくのその言葉に譫言のように応えてくれた。
「んっ…ぁ…寿、さんっ…好き…ですっ…私は…貴方がっ……」
二人の『好き』があって、初めて愛は完成するように思えた。
あぁ…愛するって、こういうことなのかな、なんて幸せを実感したら、それが身体にも顕著に表れた。
「…好きだよ……トキヤ…」
「っ、ぇ…あっ…名、前っ…んぁっ…!」
ぼくが名前を呼んだことも、覚えてないぐらい、今日は君を愛したい。
それで、君からの愛を貰いたい。
繋がったそこは元々一つだったかのようで、そんなの普通、女の子なはずなんだけど、それでもそんな錯覚に陥るぐらい、トッキーのそこはぼくを締め付けてはぴったりと結合するようだった。
「っあ、っ…寿、さっ……!」
「…名前っ…呼んでよ…ほら……ね、っ…?」
「…ぁ…っ嶺、二…さ、んっ…っ…?」
恥ずかしそうに、少し申し訳なさそうに、それでも呼んでくれたぼくの名前。
…トッキーの口から「嶺二さん」だなんて、正直笑えない。
自分から名前で呼んでなんて言ったのにね。
ほんと…余裕ないや。
「…好きですっ…嶺二さっ…ん…!」
「……ぼくも…君が好きだよ……」
あだ名をつけるのは、それなりに仕事上のみで親しくなれたら良いなと思うから。
だからあえて名前は呼ばない。
でも…君なら名前で呼びたい。
そう思えるんだ。
トキヤ、愛してるんだ、君を。
だから…おにーさん、余裕ないけれど…これからもおにーさんぶらせてね。
─END─