短編BL

□ポッキーゲーム
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「おい、黒崎。」

「…んだよ…」


談話室のソファーで寝ていた俺をいきなり起こしてきたのは、片手にポッキーの箱を持って俺を起こす異様な姿の恋人…カミュだった。


「ポッキーゲームやるぞ。」

「…はぁ?」


俺、寝惚けてんのか…?

今、カミュの口から出た言葉に様々な疑惑しか出てこなかった。

あのカミュがいきなりポッキーゲームだとかぬかすわけがねぇって…


「別に夢ではない。現実だ。」

「いや、んなこと聞いてねぇし人の頭の中読むなよ。つーかなんでポッキーゲームをお前となんか…」

「嫌なら別に構わん。その代わり不戦勝として俺の言うことを今日一日全て聞いてもらおう。」


寝起きの頭だとなかなか切り替えが出来なくてカミュの言葉さえもまともに入ってこない。


「…なんだそれ。お前、俺に何かさせたいのか」

「いいや、ただお前とポッキーゲームをしたいだけだが何か問題でもあるか?」

「問題大有りだろ…」


一応恋人ではあるけれど、何でわざわざそんなめんどくせぇことしなきゃなんねぇのかがさっぱりわからねぇ。

それでもカミュは俺の気持ちも無視するようにポッキーの箱や袋を開けては中身を一本だけ取り出した。


「ほら、やるのか、やらないのか」

「…これ、口離した方が負け、だったか」

「そうだ。」


ソファーで相変わらず寝ていた俺の顔の前に来るようにソファーの前にしゃがみこんできたカミュはチョコが付いている方を口に含み、手で持つ方を俺の方に向けてくる。

何考えてんのかほんとにわかんねぇけど…とりあえず、こいつの言いなりになるのはなんか癪にさわるから、横になりながら仕方なく口にそれをくわえた。



…思ったより…顔ちけぇ…

つーか…こいつシルクパレス…外国人なだけあって改めて見ると綺麗な顔してんだな…


「…ちなみに、目線反らしても負けだからな」

「!?」


新たに加わる特別ルールに疑問しか浮かばなかったけれど、受けてしまった以上どうしようもなかったので、ゆっくりと口を進めた。


カミュは焦らすようにして少しずつしか口を進めてこない。
一方俺は無様にも恥ずかしくて口を進められなかった。

いつまでも交錯する視線に耐えきれなくなりそうで、必死に違うことを考えようとした。

今日あったことや明日の仕事のこと。

考えるだけで気分も変わるような気がしていたが、それさえもカミュに見抜かれた。


「…俺以外のことを考えるな…」

「っ…、」


頬に添えられた冷たいカミュの手に身体が震え、目を細めた。
それに触発されたようにカミュは口を進め、顔がどんどんと近付く。


「…もう進まないのか?」

「…うっせ、ぇ…」

「…じゃあ、俺の勝ちだな」

「な゛っ…んっ……!」


ぬるっとした感触を唇で感じた。

チョコレートにまみれたカミュの唇に、チョコレートにまみれた自分の唇が塞がれたのだと気付いたのはそんなに遅くなかった。


「…甘いな…」

「……お前…甘いの好きだろ…」

「…あぁ…そうだな。でも」



“甘いお前も好きだ”




お前のそのセリフの方が甘ったるくて寒気がしたけれど、そんなのも悪くないと思った自分も、きっと甘い。





─END─



「…ちょっともっかいやらせろ」

「別に構わないが…」

(お互いポッキーくわえ)


─ガチャ(談話室の扉開き)


「あー!ミューちゃんにランランこんなところにい…」

「ったく…二人とも探したんだからね。一体ここで何し…」

「「………」」

「……あのさ。」

「…なんだ、美風」

「一応ここ、談話室なんだけど」

「…そうだな」

「公共の場なんだけど。良い大人が何をして…」

「ねぇアイアイ」

「何レイジ、今二人を怒ってるんだけど」

「ぼくたちもやろうよ!ポッキーゲーム!」

「…あのさ、レイ…」

「やろうよやろうよ!楽しいよ絶対!」

「お前の恋人もそう言ってるぞ」

「カミュ、ちょっと黙って」

「こういう時だけは嶺二に救われる」

「ランマルも黙って」

「こういう時だけって酷いよランラン!!」

「そうだ黒崎。ポッキーゲームに負けたのだから後で命令聞け」

「…ちっ…」

「…二人って絶対やってることえげつなさそうだよね」

「アイアイ!それ15歳のセリフじゃないよ!!」



─END─

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