短編BL

□温泉はーいろっ
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「誰か一緒に温泉はーいろっ!」



マスターコースにて、後輩に付き添う形できたとは言え露天風呂に入らない手は無いと思ったぼくは温泉に入ろうと提案した。
夕飯も終わり、特にすることも無くなった日の落ちる頃。


露天風呂だよ、露天風呂。
入らないわけがない。
だって滅多に入れないし。

普段からつれない面子だったけれど、きっとこういう場にきたら何か変わるかなと思い、誘ってみた。

けれどまぁ、ぶれないよね、彼等も。



「パス」


「誰が愚民と入るかたわけが」



いつもと変わらない彼等なら、こう返ってくるよね。
大体、こんな場に来てキャラ変わるなら元々こんなキャラじゃないだろうし。


「ひっどいなぁもう…」


ぼくはブーブーと唇を尖らせて拗ねてみた。

でも、一緒に入ってくれそうな人は…一人いる。
押しまくればきっと折れてくれる。
何だかんだで優しい彼。



「ランランーっ!温泉!入ろ!」

「は?」

「入るよね!?」


ぼくはランランのいるコテージに行っては、そう押し掛けた。

いかにも『こいつ何言ってんだ』って顔でぼくを怪訝そうに見るが、気にしない。
だって、いつものことだし。
そんなんで引き下がるぼくじゃない。


「っ…なんでテメェと一緒に入んなきゃなんねぇんだよ」

「えー!良いじゃない!入ろうよ!ね!?入るよね!?ね!?」

「うっせぇ!今ベース弾いてんだ!」

「じゃあ弾き終わるまでぼくちんいつまでもここで待つからねっ!!」


ぼくはランランの前にどかっと胡座をかいて座り、ランランを見つめる。
そんなぼくの態度に、最初は無視していたけれど、ベースを弾けば弾くほどぼくの視線が気になり始めたのか、最終的には舌打ちをするランラン。



「…だーっ!うっぜぇ!わーったよ入れば良いんだろ入れば!」



ランランの根負け。
まぁランランは絶対一緒に入ってくれると思ってたけど。


だって、ランラン、優しいし。



「やったぁランランありがと大好きっ!そうと決まれば早速浴衣を持ってゴーゴー!」

「……の前に待て、嶺二。」

「ん?どったのランラ、ン……」



ふっと上からぼくの顔に被った黒い影。

柔らかい感触が唇を擽った。




「……どうしたの、ランラン。」



「……今度からは、藍とかカミュとか……」

“風呂に誘うんじゃねぇ”



掠れた声が聞こえた、ような気がした。
日も落ちかけ、電気も消えた暗い部屋。
ランランの口元と吐息だけで、そう感じた。

ランランの背中はコテージから出ようとしていた。


「…ねぇランラン。」

「なんだよ。」

「……ランラン、好きだよ。」

「…………おう。」



アイアイやミューちゃんを誘ったのは、ランランと二人だけじゃバレるかななんて思ったから。

でも、やっぱり二人だけが良いなんて。


狡いんだろうな、ぼくって。





暗い森の中、ぼくらは露天風呂に向かう道を、ゆっくりと二人で歩いた。




─END─




「…あとね。」

「……んだよ。」

「……ぼくと入りたかったって、もっと素直になってほしかったな。妬いて拗ねてベース弾いてたランランも可愛いけど。」

「……………その口、使い物にならないぐらい噛み付いてやろうか。」




─END─

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