短編BL

□大人ぶんな
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「…おい嶺二。テメェ…マスターコースのやつまじでやんのか?」




社長からマスターコースとやらの担当となれと命じられたその日の夜。

俺は嶺二の家に上がり込みそう尋ねた。




「うん。だって社長の命令だし…それに、後輩だよ!?後輩!!可愛いよ!絶対!僕後輩大好きだもん!!」




ルンルンと踊り出しそうな嶺二のテンションに俺は盛大にため息をついた。





なんでこう…

こいつは考えねぇんだろうか…

俺が考えすぎなだけか…?




嶺二とこうやって


二人きりで会えなくなる、なんて。





「…どったのランラン。元気ないぞー?お兄さん気になっちゃうから話してごらんー?んー?」


俺の悩み事も感付いていないのか、不機嫌極まりない俺の頬をツンツンとつついてくる。




「だーっ!うっぜぇ!やめろ!ツンツンすんのやめろ!」

「ツンツンしてんのはランランの方だよーっ?」




…ツンツン違いだばかやろうっ…


どうしてこう…こいつの前だといつも通りの俺になんねぇんだよ…


余裕あるフリもできねぇ




「あー…なんだ…別に…何でもねぇよ…」


「何でもないって顔してないぞ!ランラ
ン!」

「っ…うっせぇ…」



俺は嶺二から少し距離を置き、床に座り直す。






「…そりゃあ。ランランとは今までみたいに会う時間減っちゃうけどさ。」







…っ…

わかってんじゃねぇか…くそ…



ソファに座っている嶺二を横目で睨むように見上げると、いつも通りのニコニコした笑みで俺を見ていた。



「…わかってんじゃねぇか…」

「だって。ランランわかりやすいもん。」



…これはあれか…

やっぱり歳の差ってやつか…?




「…それにさ。僕だって、ランランと会えなくなるのは寂しいんだよ…?」



ソファから降りて、床に座っている俺の目の前に座って、俺を見上げてきた。



「でも…仕事だから。それに、マスターコースは寮は一緒だよ。だからむしろ今までより会えると思うんだけど…どう?」






…確かに。
マスターコースの寮は同じだ。

下手したら部屋が隣って可能性だってある。


そう考えたら、今までより会いやすい。






「…それに…同じ寮って聞いて、嬉しかったんだから…。二人きりにはなりにくいかもしれないけど…」

さっきまでの余裕の『ニコニコ』は今の嶺二の表情からは消えている。



恥ずかしそうに、潤んだ瞳で。

微かに赤く頬を染めて。

それでも嬉しそうに俺を見上げてくる。







「…はぁ…」




俺は本日二度目の盛大なため息をついた。




「…ランラン…?」

「そんな顔されちゃ…たまんねぇ。」

「えっ…ランランっ…うわっ…!」





食ってくれって誘ってるようなもんだろそれ。






「まっ…話終わってないっ…」



俺の手によって床に押し倒された嶺二は、あたふたと喚き出す。




「もう黙れって。うっせーな。」

「いやっ…だから…」

「わかったから。マスターコースやってやるよ。そんなお前の嬉しそうな顔見たらやらねぇなんて言えねぇ。」

「ラ…ンラン…」

「…だから。マスターコース始まるまで俺ここに居候すっから。」

「…はっ!?」

「よろしく。先輩。」

「ちょっ…待っ…ランランっ…んぅっ…!」









嶺二の余裕な顔をぶっつぶす。

お前は余裕ある顔なんてすんな。


困るんだよ。

先輩面されると。



先輩面は他人の前でやってくれ。




俺の前では…



そうやって甘えてほしい。





「っ…ランラン…かっこよすぎだから…ほんとっ…っう…んっ…!」

「…もう…黙れって…」






先輩面したがる嶺二の唇を言葉ごと塞ぐ。




俺の前では先輩面しないでほしい。


でも、俺以外の前では、こんな表情しないでほしい。





そんな我が侭をキスに込めて…。












─END─

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