短編BL

□数年後のファーストキス
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「ま…待て、って…藍っ…」


「なんで。」


「なんで…って…」


「嫌なの?」


「い…嫌じゃないけど…」







そう、嫌じゃない。



嫌じゃないんだ。




だから、何で嫌じゃないと思ってしまう自分がいるのかがすごく不思議で。






「…ショウ…」

「っ……」



瞳に映る俺じゃなくて。


藍の瞳を見る。





…あぁ…この瞳…


狡いんだよ…


人の感情を狂わせて惑わせるような…






「…ショウ…目…つむって…」


「…っ……!」







…もうダメだ。



何も考えられない。



嫌じゃない。

むしろ、してほしいだなんて。





「っ…藍っ…」



重なる瞬間。




俺は藍の名を呼ぶ。





「っ…」



迷ったような、困惑したような藍の声が聞こえ




次の瞬間に訪れたのは、耳元に落とされた藍の唇だった。






「……!?」

「…狡いんだけど…名前…呼ぶとか…」




少し照れたような藍の表情。




「な…んで…耳…」

「…何となく…」

「…」

名前…呼ぶのは…いけないのか…?



いや…無意識に呼んじゃうだけなんだけど…




「…ちょっ!もっかい!藍もっかい!」

「っ…はぁっ!?なんでボクがっ…」

「いっ…良いからっ…!」


そう懇願してみるも、藍は照れたような顔でしてくれそうにもなかった。





「…はぁ…」

「…とりあえず…、今はこれで良い?」

「えっ…んっ…!?」




ふっと額に掛かった髪を退けられ、額にキスを落とされた。





「─っ…!?」

「…キスしたくなるって、こういう衝動のこと言うのかな…」

「へっ…何っ…んぅっ…!」







額にキスを落とされた後、不意打ちでされたキス。







…トキヤの『取っておきなさい。』って言葉の意味は


こういうこと、なのかな…





恥ずかしいけど。


幸せに満ち溢れたこの気持ち。






そんな、甘い甘いファーストキス。









─END─
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