短編BL
□演技の延長線
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「…ショウ…っ…何してっ…!」
俺に覆い被された体勢になっても、藍は冷静に演技を続ける。
「…い…きなり…何…」
「藍…俺…っ…」
藍の手首を掴み、ギリッと力を込める。
「っ…痛っ…」
「痛くしてんだから当たり前だろ…」
逃げないように、これでもかってぐらいの力を込め、片足をベッドに乗せた。
ミシッという音だけが部屋に響き、余計に緊張感が漂う。
藍と視線が交う。
いつも見上げる立場の自分が、こうして藍の上に立って見下ろしている。
─…藍って…こんな顔すんのかよ…
いつもと違う表情に俺は困惑し、演技は全て頭から消え去った。
そう、前回も…
前回の撮影もこうなって…パニックになったんだ。
「…ショウ…」
そう、形の良い綺麗な唇から小さく俺の名前が漏れた。
高く透き通るような、少し掠れた声で。
「…好…き…」
動揺した俺の瞳を捉え、射ぬくように、でも甘えるような視線を送り、藍はそう呟いた。
「…っ…!?」
─っ…な…んだよっ…こいつっ…!
俺が攻める内容だろ…
なんで…なんで俺がこんな気持ちになって攻められてる気分になんだよっ…!
「…しょ…う…んっ…!」
苛立ちというよりも、負けてるような気分に耐えきれなくなり、俺は台本を無視し、無我夢中で唇を重ねた。