短編裏BL

□一番の媚薬
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「っ…ありえない…何なのこれ…」


真夏のコンクリートの道路の上を、熱い身体を引き摺りながらそんなことを呟く。


オーバーヒートしたみたいな身体の熱さ。

…いや、違う。
熱の質が違う気がする。

オーバーヒートした時はただ熱くて苦しい。

でも今感じる熱は、狂いそうな熱さだ。

くらくらとするような熱じゃなくて、身体の中に熱が籠ってはボクの身体を蝕むような悪戯な熱。


真夏の外の空気さえもボクをおかしくさせる。


あぁ、熱い。

火傷しそうだ。
金属が溶けそうだ。



頭のネジ、緩んだら博士のせいだ。



「…ほんと…博士のせいだ…」




さっきまでラボにいたボク。
いつも行っているメンテナンスのためにラボに行ったはずだった。

何も問題なくメンテナンスが終わったボクに何故か博士は薬を飲めと怪しい液体の入った小瓶を渡しては強要してきた。

何も問題なんて無いんでしょと問いたが、博士は夏バテにならないように飲んどけとか怪しいことを言って無理矢理ボクの口の中に流し込んだ。



その数分後、この様だ。


火照るように熱くなったかと思えば、敏感になり始める身体。
疼き始める節々にボクは博士を睨み付けた。

博士はボクの様子を見て満足そうに頷くと、どうやら薬は藍の身体にあってたようだとかなんとか言ってまた薬の調合をし始めた。

舌に微かに残っていた薬の分析をしてみる。

人間には使えないような化学薬品が調合されている。

これは多分、ボク専用の薬。


所謂、ボク専用の媚薬。




「ほんと…本調子だったら博士の眼鏡でも瞬殺したかった…」


恋人の所に行っておいでだなんて軽々しく言っては苦しんでるボクを早々にラボから追い出した博士。


「…ほんっと…ありえない…」


今、この状態で恋人であるショウのところへ行ったら、どうなるか自分でもわからない。

ただでさえ制御出来ないこの頭の中の回路。
身体をコントロールする機能が麻痺して、人間でいう野性的な、そんな神経になっている…気がする。

そもそも野性的とかロボットのボクにはよくわからない概念だ。
ロボットに野性的とか本能的とかそんなものはない。

でも、そんなないものも表れてしまいそうな状況が今の状態だ。



「…やっと…家、か…」


ボクは家に着くと直ぐ様ベッドに座った。

ベッドなんて前までただの飾りだったけれど、ショウと寝ることで最近ようやく役目を果たし始めたステンレス製のベッド。

座ればボク一人分…いや、ロボットだから普通の人間よりは重量ある一人分にベッドが軋んだ。


「…はぁ…どうしようか…」


さっきまではここまでくることにだけ神経を向ければ良いだけだった。

だがしかしここまで来ると何もすることが無くなり、身体の疼きばかりに神経が向いてしまう。


「…仕事…なんて出来ないし…」


仕事が出来るほど、ボクの身体は出来ていなかった。

そろそろ冷静さも失いそうだ。

もしここにショウがいたら、多分もうどうしようもなかった。
ショウに有無も言わさず襲いかかっていたかもしれない。


「…今日はショウ…一日仕事だったよね…」


なら大丈夫だと安心する反面、この熱をショウに奪ってほしいという寂しさもあったが、そんなことも言ってられない。

ショウを傷付けたくはない。



だからとりあえず、今すぐこの熱をどうにかしなきゃならない。

そう思い、ボクは自分の下半身に手を伸ばした。

ピクッと反応する自分の身体が何だかいやらしいような恥ずかしいような感じがして、思わず周りに誰もいないか確認してしまった。

いや、誰かがいるわけがない。
家の鍵は完全に掛けた。

ボクは意識を自分の身体に戻し、少しずつ手を足の間に忍ばせる。
衣服越しからでも伝わる硬くなったそのモノは完全に博士の趣味というか好奇心の塊だった。


こんな機能、無駄すぎる。
要らない。

でも、ショウと付き合い始めてからその考えは変わった。
これがなきゃ、ショウとSEX出来ない。
ショウのあの頬を赤らめた表情や、ボクを求めるような濡れた瞳を見ることは出来ない。


何より、ショウと一つになれる。

ただそんな悦びがボクを支配する。

あんな幸せは、他にない。



「…っ、ぁ…」


衣服越しに触れただけで声が漏れ出す。


…嘘でしょ
こんなに気持ち良いなんて


自分で触って声を出すなんて、なんて羞恥プレイ

自慰行為なんてありえないとか可哀想とか思っていたのに。



「…っ…も、っと…」


ズボンのチャックを降ろし、下着の中に手を入れる。


こんなに気持ち良いなんて知らなかった。

先走り汁が既に勃ち上がった自分のモノからダラダラと垂れ流していた。
ボクはそれを自分の指に纏わせては滑らせた。



もういい。
羞恥心とかくそくらえ。

もう自分の中で憚るものは何もなかった。
ただ気持ち良いというその感覚に身を任せるしか今はもう頭になかった。



「…ん、ぅ…ぁ…」


先端を親指と人差し指ゆびで擦る。
徐々に大きく膨らむそれはロボットのには見えなくて、まるで生きている人間のようだった。


「…っ…や…、ん…」


静かな部屋だからこそ余計に響く自分の声が妙にいやらしくて、忸怩たる思いさえ抱いたけれど。

もう、頭の中にはイきたいという欲望しか無かった。


唇をぎゅっと噛み締めては、手を上下に扱き、刺激を与える。

声だけは何とかこらえたかったけれど、爛熟していこうとするボクのモノに与えられるその刺激は薬のせいでどうにもならなかった。



早くイけば…
一回ぐらいイっとけばその後は普通に仕事に戻れると余裕をこいていた。


でもそれは間違いだった。



「…っ、ぅ…あぁっ…んっ…!」


ビュッと先端から放出された生殖機能がまるでないただの白い粘りけのある液体。

これで終わるかと期待していた。


なのに、身体の熱は冷めない。



「…何、これ…どういうこと…?」



抜く前と変わらない。
何も変わらない身体の疼き。

むしろ上がる熱と渇き。


どうしたら良いのかわからない。
全然わからない。



「…っ…抜けば良い、んじゃ…ないの…?」


博士がどんな薬を作ったのか調べれば良いんだろうけど。
生憎今そんな頭を働かせられるほどの力はない。


「…っ…あぁ…もう…」


とりあえずティッシュで自分の身体から出た液体を拭っては、もう一度自分のモノに触れた。


あぁもうやだ
また身体が反応する

人間て、こんな面倒な欲望と毎日戦うんだなんて思ったらこんな面倒臭いことはないななんて考えて苦笑いをしたその瞬間だった。





「…おい藍ー。いるなら玄関開けろよ…な…」


「……は?」



急に開いた部屋のドア。

その先には何かいけないものを見てしまったとでも言いたげなショウの顔があった。
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