短編裏BL

□好きという言葉
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「おーいー砂月!」

「……なんだよ……」



オフの日に俺はこいつ、来栖翔の部屋に行ってはこいつの歌の練習に付き合わされている。

那月に比べれば断然下手だ。

だからこそ、指導してほしいとか頼まれて来てやったが。



「…聴いてないだろ。」

「……聴く気にもなんねぇ。」




別に下手だから聴く気にならないとかそういう訳じゃねぇ。


ただ、久しぶりに会ったのに、練習しなきゃなんねぇってのが気にくわねぇ。



…こいつは解ってねぇのか…?


俺が会いたかったって思ってるって。




「…砂、月…はさ…」

「…は?なんだよ。」



俺はソファにどかっと座り、こいつの言葉を待つ。



「……あ、のさ…」

「なんだよ早く言えよ。」

「………お…俺のこと…好き…?」

「………はぁ?」




な、んなんだよこいつ…


急に顔を赤らめて、そんなこと改まって聞くなんて…




「…だ、だから…お前、は…俺のこと好きかって聞いてんの…」

「…はぁ?なんでわざわざ改まってんなこと…」



付き合ってんだろ、俺ら。

ちげぇのか?

なんでそんなのわざわざ言わなきゃなんねぇんだよ。



「……き…聞きたい、から…」

「っ…はぁっ…?だからなんでっ…」

「いっ…良いだろっ…聞きたくなったんだよ…」



顔を真っ赤にしてはソファに座っている俺を立って見つめてくる。


なんだっていきなりそんなこと言うんだか分からねぇ。


大体…真っ正面からんな恥ずかしいこと言えっかよ…



「…………嫌だ。」

「なっ…なんでだよっ!」

「嫌なもんは嫌だっつってんだろ!」

「たまには言ってくれたって良いだろっ!」

「だからなんで言わなきゃなんねぇんだよ!」

「聞きたいから、だよっ…」




両手に握り拳を作っては俺を変わらず見つめてくる。



聞きたい、って…

なんでだよ…

意味…わかんねぇよ…





「……どうしても…だめ、か…?」





…そんなねだるような目…

すんじゃねぇよ…

こっぱずかしいのに、言ってやりたくなんだろっ…




「……あーっ…くそ…一回しか言わねぇからな…」



俺は立っていたこいつの手を引っ張っては抱き寄せた。

背中に手を回しては、そっと耳元に唇を近付けた。




「………好き、だ…」



「……っ、」






こいつの身体がピクッと反応した。

そして、もっと擦り寄せるように俺の身体に埋もれた。



「…砂月…」

「……なんだよ…って…こっち見んじゃねーよ!」


俺の名を呼んでは、ちょっと見上げるように俺を見てきた。

ムカつくぐらいに恥ずかしくて、俺は顔を背けてはそう言い放つ。




「……俺も…砂月…好き…」






こいつはそう言って、ぎゅっと抱きついては幸せそうな顔をする。



なんだよ…

なんなんだよ…

幸せそうな顔しやがって…


一回しか言わないとか自ら言ったくせに、もっとそんな顔をさせたくなる。



「……お前…んな顔すんじゃねぇよ…」


「え…どんな、顔……っ、んっ…!?」





…可愛すぎる。


可愛すぎんだよ。


もう大分長い時間一緒にいると思ってた。

お前の表情は全て見たと思っていた。



…なんだよ…その笑顔…



壊したくなる。


悔しくて、苦しくて


どうしようもなく愛しくなって。



いつまでお前は俺を壊すんだよ…


暴力的にしかお前を愛せない気がして、自分自身に嫌気がさす。






好きなのに…

こんなにも好きなのに

どうして好きだと伝えることさえも俺は出来ないんだ。




「ん、ぅ…さ…つきっ……?」


「……もう…黙れよ……黙って…俺に抱かれろよ…」


「なっ…ん……!」



そういう愛情表現しか出来ない。

餓鬼だな。


そんな自己嫌悪ばかりが渦巻いた。
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