短編裏BL

□トキヤ欠乏症
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トキヤにタオルを借りた。


雨が降って、濡れた俺を見かねて貸してくれた。


でも、俺はそれを使えない。



「…どうすっかな…折角借りたのに…」




俺は自分の部屋に戻っては自分のタオルで頭を拭いた。




トキヤに借りたタオルを使えない理由。


それは、




トキヤのタオルはトキヤの匂いがすごいから。





嫌なんじゃない。

むしろ、なんかこう…やばいんだ。




…いや…自分に言い訳している自分もバカみたいだな…。






「……トキヤに抱かれてるみたいな気分になる、なんて…言えねぇっつの……」








トキヤに最後抱かれたのは、いつだったっけな…



数週間前…だっけ。


もう何ヶ月も抱かれていない気がする。





「…寂しいのは…俺だけか…?」







あいつは俺よりも仕事が忙しいし。


俺よりも時間がないのは解っている。




「…はぁ…辛い………」





寂しさに負けて、俺はトキヤに借りたタオルを頭から被ってみた。


別に会ってない訳じゃない。


なのに、トキヤが恋しい。






「……トキヤの…匂いがする…」




俺はタオルを顔に当ててはそう呟いた。




変態かっつの俺は……





でも、匂いに誘われ、トキヤに抱かれた思い出がノンストップで自分の脳内で再生される。





唇が優しく重なり


トキヤの指先が首筋を這い


時折吸われる肌


疼く下半身


トキヤの全てを身体で感じる



俺の上で色っぽい顔で、

俺の中で、熱く果てるトキヤ






「……思い出すな…くそっ……」




自分の指がトキヤを思い出そうとして、首筋を滑る。




やめろ…これじゃあ…俺…

本当にっ……




「……っ…ぅ…」




理性が動く身体を制止しようとする。

でも、身体の熱は冷めなくて。
それ以上に火照り出す。


きっと最近忙しくて、性欲とかそんなのほとんど感じなかったせいだ。

今までの分がぶり返すように、熱を外に出したいと身体が騒ぎ出す。



トキヤのタオルでオナニーなんかできっか…

そんなん…そんなん完全に変態じゃねぇか…っ…



「あー!落ち着け俺っ!」



全てをぶちまけたい衝動にかられる。


でも、そんなことをしている自分を想像して羞恥心に見回れ、俺はソファに倒れ込んだ。






「…な、んだよ…トキヤのタオル…媚薬でも…入ってんのかよっ……」







じくじくと疼き出す下半身。

左手でタオルを持つと、俺の右手は本能のままに足の間の昂りに向いていた。



「…だめ、だっつ…の…」




だめだと抑制をかける度に、俺の中で興奮が高ぶる。

本能のままに動いていた俺の右手は、ついにその昂りに衣服越しに触れた。



「…っ………」




トキヤを思い出しただけでこんなんになんのかよ…


手に触れたそれは、既に熱く、硬くなって、熱を出してくれと言わんばかりに主張していた。



「……くっそ……もう知らねぇ…」





俺はトキヤのタオルを左手で持っては、右手でその昂りを直に触れた。



「…ほんと…俺…こんな変態だったっけ…っ……」





自嘲気味に笑うが、こんなのも心のどこかで羞恥心から自分を庇っているんだと解っていた。

本音は、ただ、トキヤのこのタオルで、抜いてしまいたかった。


トキヤに抱かれているのを思い出して、想像して、出したかった。



ただ、それだけだ。




「……っ…は、ぁ…っ…トキ…ヤっ……」



直に触れたそれを手で包んでは、上下に扱き始めた。

ぬるぬるとした透明な体液が、俺のその行為を助ける。

トキヤのタオルを顔に当てては、トキヤの名を呼ぶ。
そんなことをしているという恥ずかしさが余計に俺を興奮させた。



「…っ…ぅ…はぁっ…ん……」


トキヤとの行為を思い出せば出すほど、起き上がる俺のソレは、もう後戻りなど出来なくて。



「…は、ぁ……トキ…ヤっ…」




唇からそう漏れ、もう一度トキヤのタオルを嗅いだその瞬間。







「………呼びましたか?翔。」








俺しかいなかったはずの部屋に、そのタオルの持ち主の声が部屋に響いた。








「………えっ………?」




俺はただただ驚いた。
そしてゆっくりとソファから起き上がった。



「…人が貸したタオルで立派にオナニーですか貴方は。」

「えっ……ちょ…待てっ…な…なななな…何で部屋にっ……」

「雨に濡れていたから心配になって。部屋の鍵、開いていたので勝手ながらお邪魔しました。ちょっと前からいましたよ。貴方、全然気付かなかったみたいで。」





クスクスと笑うトキヤだが、俺にはそんな笑いも何もかもが頭に入ってこなかった。
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