短編裏BL

□甘い夜
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「っ…藍…」



はだけた服の襟元

乱されたベッドのシーツ




そう

全ては藍のせい。







「何、どうしたの。」

「…いや…どうしたの…って…」





何故。
藍は俺を自分のベッドに寝かせ、俺に覆い被さっているのか。






「そんな疑問、答えるまでもないでしょ。この間のレコーディングルームの続き。」


藍は俺の表情からその疑問を読み取ったのか、そうさらっと言い放った。



「…つ…続き…って…」




そうだ。
この間レコーディングルームで二人で練習していたとき。

ソファで休憩していた俺に藍はキスをして…




「その後は練習に支障をきたすから、この続きはまた今度ね…って、言ったよね?記憶力のないショウでもさすがに覚えてると思ったんだけど。」




…確かにそう言われたのは覚えている。


でも。




「…な…なんでいきなり…」

「何…嫌なの?」



ずいっと顔を近付けては、そう尋ねてくる藍。

悪気がないのはわかっている。


俺とそうしたいって思ってくれるのも嬉しい。


俺だって藍とそうしたい。




でも…
藍とこうするのは初めてじゃないけど、やっぱり心の準備は必要で…。






「い…いや…ってか…嫌じゃない…けどっ…でもっ…」


「悪いけど。ショウには拒否権ないよ?」



悶々としていた俺の言葉を聞くまでもなく、藍はそう言って俺の唇をそっと指でなぞった。

端から端まですぅっ…と優しくなぞられ、俺は思わず目を反らした。





「だめ。こっち見て。」



藍は俺の視界の中心に入るように顔を移動させてきた。




「今日は…ボクだけを見て考えなよ。」




「なっ…」

「ショウのその顔、ボクの前でしかしてないよね。もっとよく見せて。見たいんだ。」

「みっ…見んなっ…恥ずかしいから…」




絶対、今顔真っ赤だ。

頬が熱くたぎるように火照っていて。



「恥ずかしがってるショウ、可愛いんだ。だからほら…見せて。」






…どうしてこう…


…こいつはこういう台詞さらっと言うんだよっ…



余計に顔が熱くなるのがわかった。




そっと視線を合わせると、藍の表情は相変わらずいつものようにポーカーフェイスで。




でも、俺の耳にそっと顔を近付けてはくすっという笑い声と共に


「…ねぇ、もう良い?散々焦らしといて…覚悟出来てるよね…?」



そう、掠れた声でそっと囁いてくる。




「か…覚悟っ…てっ…んっ…」



吐息混じりにちゅっという水気の帯びた音が耳を支配する。

耳の輪郭を唇で縁取り、濡れた舌で耳の穴を塞ぐ。

ねっとりとしたその感覚に俺は思わず藍の腕を掴んだ。



「あ…藍っ…」


「…もう…我慢できないって…」


耳元から離れた藍の唇は、俺の熱くなりはじめた吐息と交錯する距離に移動し、そのまま俺の吐息と共に唇を封じ込めた。
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