短編裏BL
□甘い夜
1ページ/3ページ
「っ…藍…」
はだけた服の襟元
乱されたベッドのシーツ
そう
全ては藍のせい。
「何、どうしたの。」
「…いや…どうしたの…って…」
何故。
藍は俺を自分のベッドに寝かせ、俺に覆い被さっているのか。
「そんな疑問、答えるまでもないでしょ。この間のレコーディングルームの続き。」
藍は俺の表情からその疑問を読み取ったのか、そうさらっと言い放った。
「…つ…続き…って…」
そうだ。
この間レコーディングルームで二人で練習していたとき。
ソファで休憩していた俺に藍はキスをして…
「その後は練習に支障をきたすから、この続きはまた今度ね…って、言ったよね?記憶力のないショウでもさすがに覚えてると思ったんだけど。」
…確かにそう言われたのは覚えている。
でも。
「…な…なんでいきなり…」
「何…嫌なの?」
ずいっと顔を近付けては、そう尋ねてくる藍。
悪気がないのはわかっている。
俺とそうしたいって思ってくれるのも嬉しい。
俺だって藍とそうしたい。
でも…
藍とこうするのは初めてじゃないけど、やっぱり心の準備は必要で…。
「い…いや…ってか…嫌じゃない…けどっ…でもっ…」
「悪いけど。ショウには拒否権ないよ?」
悶々としていた俺の言葉を聞くまでもなく、藍はそう言って俺の唇をそっと指でなぞった。
端から端まですぅっ…と優しくなぞられ、俺は思わず目を反らした。
「だめ。こっち見て。」
藍は俺の視界の中心に入るように顔を移動させてきた。
「今日は…ボクだけを見て考えなよ。」
「なっ…」
「ショウのその顔、ボクの前でしかしてないよね。もっとよく見せて。見たいんだ。」
「みっ…見んなっ…恥ずかしいから…」
絶対、今顔真っ赤だ。
頬が熱くたぎるように火照っていて。
「恥ずかしがってるショウ、可愛いんだ。だからほら…見せて。」
…どうしてこう…
…こいつはこういう台詞さらっと言うんだよっ…
余計に顔が熱くなるのがわかった。
そっと視線を合わせると、藍の表情は相変わらずいつものようにポーカーフェイスで。
でも、俺の耳にそっと顔を近付けてはくすっという笑い声と共に
「…ねぇ、もう良い?散々焦らしといて…覚悟出来てるよね…?」
そう、掠れた声でそっと囁いてくる。
「か…覚悟っ…てっ…んっ…」
吐息混じりにちゅっという水気の帯びた音が耳を支配する。
耳の輪郭を唇で縁取り、濡れた舌で耳の穴を塞ぐ。
ねっとりとしたその感覚に俺は思わず藍の腕を掴んだ。
「あ…藍っ…」
「…もう…我慢できないって…」
耳元から離れた藍の唇は、俺の熱くなりはじめた吐息と交錯する距離に移動し、そのまま俺の吐息と共に唇を封じ込めた。