短編BL

□小さくたって
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「翔ちゃん!誕生日おめでとう!」




「…ばか…お前も…おめでと…」





6月9日の朝。

那月は俺の部屋にきてはそう叫び、でかい図体してるくせに俺に飛び付く。


でも、いつもみたいに離せって怒れなかった。







なんで。


俺はこいつと同じ誕生日なのだろう。





身長だけじゃない



俺が一つ歳を取る度にこいつも一緒に歳をとる。




近付けないその差が。


誕生日を迎える度に思い知らされる。







お前はそんなに大きいのに。

お前ばかり大人になって。



俺はずっと、お前を追いかけてる。





そんな差が、辛かった。





「…翔ちゃん?どうしたんですか?」


「…別に…何でもねぇ…よ…」




那月に怒っているわけでもない。


自分自身に怒っているわけでもない。



ただ、どうにも変えられないことに怒っている自分が嫌だ。






「…翔ちゃん。僕は翔ちゃんが悩んでいるのを見ているの、辛いんです。だから、話してください。」





こいつの優しさにどれだけ助けられたんだろうな。


然り気無い支えがどれだけ俺を突き動かしていたんだろう。






「…那月…」



「…はい?」






笑顔の那月。


俺はお前よりずっと小さい。



でも、俺、その笑顔を守りたいんだ。





「…好きだ…今までも…これからも…ずっと…」




「はい。僕も翔ちゃんずっと大好きですよ。」





こいつは絶対、嘘なんてつかない。


それはもう身をもって知っている。




気持ちでカバーしてやる。

どうかその男気は汲み取ってほしいんだ。






次の誕生日も、その次の誕生日も。


歳をとっても、差は縮まらないけれど。




お前を想うこの気持ちだけは、お前と同じぐらい…



いや


それ以上に、きっと成長するから。







小さいなんてもう、言わせないからな。






─END─

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