短編BL
□起こしに来たんだけど
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「…ねぇ、ランマル。」
俺は会議室でいつも通り椅子を数個並べて、俺はそこで器用に寝ていた。
器用に寝るなといつもあの自称伯爵様に感心されるが、別に大したことはしていない。
そんな俺の大切な眠りから覚ましたのは藍の俺を呼ぶ声だった。
「ん…何だよ藍………んっ!?」
まだまともに目覚めてもない俺を襲ったのは、寝ていた俺の頭の上でしゃがみ、そのまま重なった藍の唇だった。
「……は……いきなり何だよ…」
……何を考えているのか普段から解らねぇ奴だったが。
この行動ほど訳解らねぇものはなかった。
「…いや、別に。どんな反応するか気になっただけ。」
「…はぁ?何だよ。俺、お前に何かしたっけか」
「何もしてないよ。気にしないで。」
…気にするな、なんて言われても。
急に年下の男にキスされて気にしないなんて出来ねぇだろ普通…
「ランマルは…キス、したことあるの?」
「はぁ?」
ほんと…
こいつ今日おかしくねぇか?
嶺二かカミュ辺りに何かされたのか?
でも、こいつの表情はいつも通り。
何かされたわけでもなさそうだし、俺をいつも通りに見るその視線も変わりない。
「…何でそんなこと…」
「……やっぱり良い。気にしないで。」
藍はそう言って立ち上がると、会議室の外に出ようとドアの傍まで歩き出す。
「……まぁお前がそう言うなら気にしないけど。」
「…ん、よろしく。」
藍がそう応えたのを聞いて、俺はまた横になった。
「…ちなみに。次の収録まであと10分。遅刻したら許さないから。」
「……はぁ!?」
…あと10分!?
時計を見れば、確かに次の収録まであと10分で。
…俺そんなに寝てたのかよ…
「起こしに来たボクの苦労、無駄にしないでよね。」
藍はそうさらっと言い残して出ていった。
…なんだよ…
あれ、起こしに来たのかよ………
…もっとまともな起こし方あんだろ!!!!!
「…ぜってぇ嶺二辺りの仕業だな…」
俺は腹いせに机をドンと叩いては会議室を出て、走って次のスタジオまで向かった。
嶺二の仕業ではなかった…というのは、また別の話…
─END─