短編BL
□Love Magic
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「おい、セシル。お前練習行かねぇのかー?」
今日はST☆RISHの新曲のダンスの練習がある。
絶対、てなわけじゃなくてほぼ自主練みたいなものだが、多分皆集まる。
寮の部屋が近いのもあって、俺はセシルの部屋に行き、そう声をかけてみた。
「いいえ、行きますよ。ショウも行くのでしょう?」
「そりゃあな!あー!あの曲早くライブでやりてー!!」
新曲はやっぱり初披露する時が一番楽しいと思う。
ファンの皆の期待、それに意地でも応えたくなる。
「…そう、ですね。」
そんな俺のテンションとはうってかわって、セシルの声は弱々しかった。
「…あれ。どうしたんだよ。」
「……別に。何でもありません。」
セシルはそう言って、ソファに座ったまま俺に背を向けてきた。
…?
俺、なんかしたっけ。
なんか…拗ねてる…よな?
「…おい…セシル…」
「…ショウは。楽しそうです。」
俺に背を向けながら、拗ねたように俺にそう言い出す。
「…え……そりゃあ…楽しいよ。お前は楽しくねぇのか?」
「………アイドルの仕事は楽しいです。ただ…」
背を向けていたセシルはこちらを向いたかと思うと、急に立ち上がり、俺の方へ歩み寄ってきた。
「…ワタシといるときよりも楽しそうなのは嫌です……ワタシを見てほしいんです。ショウ。」
そうセシルは呟くように言うと、俺の腰に手を添え、引き寄せてきた。
「…なっ…!?セシルっ…」
「ショウ…ワタシを見て…ワタシだけを見て…」
その言葉はまるで呪文のようだった。
セシルの瞳に吸い寄せられるように、逸らすことを許されないほど。
俺はただセシルの瞳を見つめていた。
セシルの甘い魅惑的な声に酔うように、俺の思考回路は麻痺していった。
「…セシル…お前…」
「…何ですか?」
「…なんか…魔法使っただろ……」
俺は耐えきれずにセシルの胸にもたれ掛かると、セシルはそのまま俺を抱き締める。
「いいえ。ワタシは何も。」
俺の反応を見てクスクスと笑うセシル。
「……ほんとかよ……」
「ええ。ショウがワタシから離れられないだけです。」
きっぱりとそう言うこいつの自信は一体どこから来るのだろうか。
こいつの自信にいつも負ける。
「…くっそ…お前生意気だ…」
腹がたち、俺はセシルをきつく抱き締めた。
それでもセシルには全然苦しそうじゃなくて。
余裕の笑みで俺の頭を撫でた。
「…ショウ。そろそろ練習行きましょうか。」
「…………もうちょい…こうしてたい………」
そうセシルの胸に顔を埋めながら呟くと、セシルはニコニコと笑ってそうな声音で俺の髪を優しく撫でた。
「…魔法、効き目強すぎたみたいですね。」
おれはそんなセシルの言葉に、一層恥ずかしくなり、セシルの身体を軽く拳で叩いた。
─END─
「ショウ!新曲の2000%のダンス!すごいですね!!」
「何がだよ」
「ワタシとショウのダンスが!!」
「…なっ!?こ、こんなんやんのかっ!?」
「ワタシ、ここだけ頑張ります!!」
「てめっ!寧ろ他頑張れよ!!!」
─END─