短編BL
□ファーストキスはとっておいて
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─トキヤside─
「…なんなんですか翔…」
朝からぐだっていた翔。
何か様子がおかしいとは思ってましたが…
「私の読書時間を奪わないでください。」
夜に寮の談話室で読書をしている私の邪魔をされては困る。
「…なートキヤー…ちょっと話聞いてくれよ…」
「…なんですか。聞いてあげますからさっさと済ませてください。」
ソファの上に体育座りをしながら、何かいじけているような翔を見てみぬ振りをしながら私は応える。
冷たい反応をしてみるが
…まぁ…一応友達…ですからね…
聞いてあげないわけにもいかないですし…。
この様子だと相当悩んでいるように見える。
いつも明るい元気な翔がこんなに悩むのは、きっと何か特別な理由でもあるのでしょう。
「ほら、翔。」
「あのさ…」
「はい。」
「トキヤって…キス、とか…したことあんの…?」
………
「…は?」
私の思考回路が止まり、そして疑問の言葉が迂闊にも漏れた瞬間。
「おチビちゃん…それはいつも寂しそうなイッチーよりも…この愛の伝道師、神宮寺レンに聞くと
良いよ。」
突然談話室の扉が開き、その声…その言葉の主、レンがいつもの自信満々のナルシストの笑みで颯爽と入ってきた。
「…また…面倒臭いのがきましたね…」
「やだなぁイッチー。面倒臭いなんて言わないでくれよ。」
「いや、面倒臭い。大体、愛の伝道師ってなんだよ。お前はただのタラシだろうが。」
「やだなぁおチビちゃんまで。俺はタラシじゃない。」
…翔の質問も意味が解らなかったけれど。
レンのその愛の何とかっていうのも理解し難いですね。
「…それでおチビちゃん。おチビちゃんはキスしたことないのかい?」
「…べっ…別に俺の事は関係ないだろっ…!俺はトキヤに聞いてたんだっ!」
…やめていただきたいですね…
その話題を私に振るのは…
翔だけなら未だしも…
レンがきたら面倒臭い事この上ないです。
「ほぉ…イッチー…は、したことある…のかい?」
…この人は何でも理解している。
何も考えていないちゃらんぽらんに見えて、実際は何でも知っている。
洞察力がある、とでも言うのでしょうかね。
「…あなた方に言う必要はないでしょう。
それより翔、何でそのような質問をしたのですか。」
私がいじられる必要はありません。
ここは発端である翔に話題を返します。
「…いや…なんとな、く…気になったんだ…」
もごもごと口ごもる翔にレンが容赦無く問いかける。