短編BL
□ばかになんてしてねぇよ
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「翔ちゃん!」
「おう、那月、どうした?」
部屋で勉強していると、那月が満面の笑みで部屋に入ってきた。
「見てください!このぬいぐるみ!可愛いでしょー!新作の!ぴよちゃんです!」
そう叫んで俺の目の前に差し出したのは、那月の大好きなヒヨコのキャラクターのぬいぐるみだった。
「…お前なぁ…どんだけぬいぐるみ増やせば気が済むんだ…」
喜ぶ様はまるで幼い子供のよう。
しかしその図体は俺よりもでかい。
俺の二倍はあるんじゃねぇかってぐらい。
「…あれ…あんまり可愛くありませんでした?」
ぼーっと那月を眺めていた俺の顔を、那月はずいっと顔を近付けて覗いてきた。
「ばっ…い…いきなり顔のぞいてくんなよっ…!」
詰められた顔の間の距離に俺は思わず椅子から立ち上がり後ずさった。
「…やっぱり…翔ちゃんの方が…」
「へっ…ちょっ…那月っ…うわっ…!?」
異常に近付いてくる那月に俺は戸惑い、そのまま後ろにあったベッドに倒れ込んだ。
「…って…」
「…翔ちゃん…」
ベッドに倒れ込んだ俺の上に那月はゆっくりと覆い被さってきた。
「いや…待て那月っ…!」
覆い被さってこられたらっ…
眼鏡がっ…!
俺は眼鏡を押さえようと上半身を持ち上げたが、俺の心配も虚しく、眼鏡は那月から外れ、俺のベッドの上に転がった。
「っ…え…」
眼鏡が外れた
と、俺の頭が認識し、直ぐ様顔を上げたが、既に那月ではなく、砂月の表情に変化していた。