短編BL
□演技の延長線
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「明日の撮影、まさかとは思うけど大丈夫だよね?」
「…だ…大丈夫だよ…」
藍に問われ、俺は視線を泳がせながら答えた。
「前回の撮影、NGばっか出してたじゃない。」
「…うっ…」
くどくどと痛いところをつく藍の言葉に俺は何も言えなくなる。
撮影の内容はBLもの。
俺が藍を攻めるという、何ともやりにくい撮影なのだが。
「ねぇ、ボクが不安だから。練習するよ。」
そう淡々と言い放った藍に俺はガタンと立ち上がった。
「…はっ…!?今!?」
「そうだよ、ほら。ベッド行くよ。」
「ちょっ…藍っ…!?」
有無を言わさず藍は俺を引っ張り、ベッドに放り投げた。
「…ま…待てって…」
「ほら、スタート。」
こんな真剣な顔されて始められたら無理なんて言えない。
それに、前回NG出しまくったのは俺のせいであり、藍はただ心配で見てくれるって言っている。
ならやるしかない。
そう腹をくくり、俺は演技を始める。
「っ…俺はっ…お前が…」
上手く役に入り込めないまま、俺は藍の手にそっと触れた。
しかし、藍はその手を振り払った。
「…役に入ろうとしないで。ボクに言うつもりでやってみて…」
俺の心情を察したのか、そう藍が耳元で囁く。
─…藍に…言うつもり…で…?
「……っ…藍っ……!」
何かが弾けたように、俺は藍の両手首を掴み、そのまま勢いよく押し倒した。