短編BL

□からかいのキス
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「トッキーはさ、今まで付き合ってた人とかいる?」


「…なんですかいきなり…」


夜遅くに突然私の部屋に押し掛けてきた寿先輩。

リビングにあるソファに腰を掛け、そんな質問を投げ掛けてきた。


「そんなことを聞くためにこんな時間にいらしたんですか?」

「うん、そう。」


いたって真面目な顔をして答える先輩に私はため息をつく。


「いませんよ。そんなことしてるほど暇じゃありませんでしたから…」


「じゃあ…おとやんのことは?どう思ってるの?」


その言葉にピクッと自分の肩が揺れた。



「何故そんな真面目に音也の名前を出すんですか…なんです?先輩は音也が好きなんですか?」


「そりゃあもちろん。おとやんは好きだよ?」


あっけらかんとして言い放つ先輩は私に何を言いたいのかがわからない。



「先輩…何が言いたいんですか…って…ちょっ…!?」


ソファで座っていた先輩がいきなり私の腕を引っ張り私をソファに覆い被さるように押し倒してきた。



「ちょ…なんですか寿先輩っ…!」


「おとやんは普通に好きだよ?でも僕…、トッキーが気になるんだよね…」



妖しい笑みをたたえながら、私の頬の輪郭を指先でスッと撫でる先輩の指。


「寿先輩っ…ちょっ…やめてくださっ…んぅっ…!」


塞がれた唇、でも先輩はそれ以上は侵入しようとはせず、そっと離れた。



「…せ…んぱ…い…っ…何…してっ…」


「ふふっ…トッキー赤くなっちゃって…かーわい!」



寿先輩はそう言うと私の頬をつんっと指先で刺し、いつもの笑顔で私から飛ぶように離れた。


「か…からかったんですかっ…!?」


ソファから起き上がり先輩を睨み付けると、先輩はクスッと肩で笑った。


「…さぁ、どうでしょう?…トッキーは面白いし可愛いなぁもう!じゃ!僕はもう帰るね!じゃあねトッキー!おやすみ!」


「あっ!ちょ、逃げるんですか寿先輩っ!!」


そんな私の言葉も虚しく、先輩は部屋から出ていってしまった。




「っ…なんなんですかあの男はっ…」



微かに濡れた唇にそっと指先で触れる。




「…明日からどんな顔して会えっていうんですかあの馬鹿男…」







そう呟いて、いつもより早く私はベッドルームへと向かった。










─END─

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