短編BL.

□そして俺は、何度も君とキスをする。
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※注意

モブの女芸能人が来栖に言い寄ってたりします。

軽率に何の違和感もなく美風の家に来栖が帰るという同棲描写があります。


全てにご理解頂ける方のみお進みください。







「へえ、来栖さんは可愛い子が好みなんですか」
「まぁ、そうですね。俺、身長低いんでなるべくなら身長高くても可愛い子が良いかなって」

MCの人にふんふんと頷かれ、「そんなこと言ったって、好きになったら関係ないと思いますけど」、なんてアイドルらしく一言そう付け加える事も出来るようになったのは、新人の頃よりは少しだけ成長してるのかなと自分で思うぐらいには、バラエティ番組にも慣れてきたのかもしれない。

とあるバラエティ番組で、恋愛関連の質問が飛ばされるのは、今度俺が出演させてもらえることになった映画、『ケンカの王子様』でラブシーンをやる事になり、その流れでこの恋愛系のバラエティ番組にゲストとして出演しているからだ。
単に業界内では俺がラブシーンをやる事が割と珍しいって話が出ているから、滅多に恋愛系番組からのオファーなんて出ないオレに、今回この仕事が来たのだろう。
あとは、映画の宣伝役として。隣には、今度の映画のラブシーンの相手役の女の子も来ていて、この番組の最後に一緒に宣伝することになっている。

「可愛い子かぁ。来栖さん、アイドルだから、可愛いファンなんていっぱいいるだろうに。」
「ははっ、そうっすね。」

インタビューはともかく、恋愛系のバラエティ番組なんてあまり出たことがない分慣れていなくて、当り障りのない答えばかりしていたのが少しつまらなかったのか、とある芸人さんたちから声が飛んできた。

「え、じゃあ、今度の映画のラブシーンの相手はどうなの?」
「そうだよー、ほら、可愛いもんね。」

そんな声に俺は、その声の言葉に出てきた“今度の映画のラブシーンの相手”を見た。

その子は俺の真横に座っていて、世間では所謂“清楚系”として位置付けられている子だった。今日もまた、そのイメージを意識してなのか、白いワンピースを着ていた。
番組的にも、映画的にも、きっとこの流れは盛り上がるから、何かしら気の利いた答えを探さなきゃと、俺は頭の中で色々考えてみる。
すると、その子は俺より先に、香水の香りをふわりと漂わせながら、「えぇ、私と来栖くんなんて…」なんて、可愛らしい小さい口で、謙虚にそう言うから、俺も思わず顔の前で手を横に振った。

「いやいや、可愛すぎて逆に俺が釣り合わないですよ」
「えぇ、そんなことないです、来栖くんの方がかっこいいから!映画の時だって本当にかっこよくて、つい照れちゃって…」

ラブシーンを演じたくせに、お互いがお互いにあまり慣れていなくて、二人で笑いあうと、周りもはやし立てる様にするから余計に照れる。
うん、まぁ多分これで大丈夫だろう。
カットも入らないし、きっと盛り上がったはずだ。


「あ、じゃあ来栖さん。何か宣伝があるそうで」
「はい。えー、○月○日から始まります、映画『ケンカの王子様』………」


芸能界に入ってから約数年。
ようやく、仕事もほぼ毎日入るようになり、歌の方も歌わせてもらえて、充実した日々を送っていた。
勿論、楽しいことばかりじゃないし、大変な事や努力しなきゃならないこと、今回みたいに慣れない仕事も沢山あるけれど、それでもこの仕事が楽しいと思えるから、俺は毎日様々な仕事に打ち込んでいた。
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