短編BL.
□そして俺は、何度も君とキスをする。
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「来栖くん。お疲れ様です。」
「あ、お疲れ様です。」
バラエティ番組の撮影が終了し、プロデューサーさんなどに挨拶していた頃、俺は先程横にいたラブシーンの相手役の女の子に声をかけられた。
相変わらず良い香りのする香水が適度に香って、そういえば映画の撮影してた時も、同じ香水使ってたなー、なんて思い出しながら、俺は彼女に応えた。
「今日はすいません。まさかあんな流れになるなんて思ってなくて。」
「え、何の話ですか?」
「さっきの、ほら。」
「あ、来栖くんの“可愛い子が好み”っていう流れ!」
「そうそれ、君にまで飛び火いってマジですいません。」
「ううん、大丈夫ですよ〜むしろ良かったかな、なんて…」
少しだけ、その子は顔を赤らめてそう言った様な気がして、俺は「え?」と聞き返すと、その子は「ううん!!何でもないの!!」と、手を横にぶんぶんと振って、誤魔化した。
「それより来栖くん、この後何か予定入ってる?」
「予定?」
「うん、仕事、かな?もし良ければ、ご飯とかご一緒できたらなぁって…」
俺は彼女にそう言われ、時計を見た。
時刻は夕方の六時過ぎ。
別にこの後仕事があるわけではないし、特に用事がある訳でもない。仕事関係の人に食事に誘われたら、多分行かなきゃいけないのが普通なのかもしれないけれど、俺は彼女の誘いを断った。
「あー、ごめん。この後用事があって。ほんとごめん。また今度誘って。」
「…そっかぁ、じゃあまた今度連絡するね。」
彼女はそう、残念そうに肩を落とすと、「じゃあ、また今度。」と、白いワンピースをひらりと翻らせて、笑って俺に手を振った。
俺は彼女に手を振り返すと、スタジオから出るなり携帯の画面を点けた。
【新着メッセージ1件】
それは見なくても分かる。
俺の、大好きな人からのメッセージ。
『今、家に着いたよ』
俺の、大好きな、藍からのメッセージ。