短編BL

□無防備なキミ
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「…ねぇ、ちょっと、ショウ。」




レコーディングルームで二人で新曲の練習をしていた。


藍がそろそろ休憩にしようかと言い出したので、ソファに座り寛いでいた時、いつもと変わりなく藍は俺の名を呼んできた。



「ん?なんだよ。」


俺はペットボトルの水を飲みながら藍に応えた。

すると藍は何も言わず、俺が座っていたソファの横の空いている所に腰を書けては俺の方を向いた。




別にいつもと変わらない藍の表情。

でも、何かしでかしそうな空気を醸し出していた。




「な…なんだよっ…ちょ……うわっ…!?」




藍は突然、俺の肩を押し、覆い被さってきた。




「ちょっ…藍っ……!?」


「良いから…黙って…って…」





突然の藍の行動に暴れると、持っていたペットボトルの水が溢れては俺の顔にかかった。




「…ほら、言わんこっちゃない…」


「あっ…藍がいきなりこんなことすっからだろ……」





呆れたような藍の言葉が上から落ちてきたので俺は罵声で返す。


でもそんな俺の罵声も、藍の上がった口角によりスルーされた。




「あーはいはい。もう黙って。」



「黙れるかよ!退けって…こんなん誰かに見られたら…んぅっ…!?」




急に顔に影が落ちた。


そして、唇に触れた柔らかい感触が藍の唇だと気付いたのは、藍の舌が俺の口内を侵してからで。




「…っ…んぅっ…や…めっ……あ、ぃっ……!」


「…ほんと…ショウは無防備だよね…他の男にもそんな顔してたら許さないよ…?」

「っ……!?」




影が落ち、妖しく笑う藍の顔に俺はばっと顔を赤くする。




「…ったく…さっきレコーディングしてた時もそんな顔してたし…何なの…我慢出来なくなるでしょ……」




藍はそう言っては、俺の顔にかかっていた水をそっと唇で掬う。




…いきなりキスしてきたのって…

我慢出来なくなったから、かよ……



そんなん言われたら…、

ちゃんと白状しなきゃなんねぇじゃんか…



顔にキスするように唇を這わせていた藍に向かって、俺は口を開いた。




「…さ…さっきは…あ……」


「…え?」




水を掬う動きを止め、藍は上目遣いで俺のことを見てくる。





「…さっき歌ってた時は…あ…藍のこと…考えてた……から……」




藍から視線を逸らしながらそう言うと、上の方でフッと笑い声が漏れた。




「な…に笑ってっ……」



「…別に。…そっか。ショウはボクのことを考えるとあんな顔するんだ…?」





藍はそう言って、唇が重なりそうなところまで顔を近付けては囁いた。






「…じゃ、他の人の前では、ボクのこと…考えないでよね…そんな顔されちゃ…たまんない…」







熱い吐息が俺の唇を擽っては、俺の唇を濡らすように舌がそっと這わせられた。






「……っ…俺…藍のことしか…考えられねぇんだけど……っん、ぅっ……!」





唇を這っていた舌は、俺が唇を開いたのを良いことに、俺の舌を絡め取った。





「……ん、っ……言うようになったよね…ショウ……でも、続きはまた今度…ね?」






藍は濡れた俺の唇にそっと自分の唇を落としては、さっき溢したペットボトルの水をまた買ってくると言い残して、真っ赤になったままの俺をソファの上に残し、レコーディングルームから出ていった。




そのレコーディングルームの続きはまた別の話。








─END─

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