短編BL

□ひたすらな楽屋キス
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「っ…んぅ…はっ…ん…あ…いっ…」


「…はっ…あ…ショ…ウ…」




俺の手首を掴んでいた藍の手は、徐々に移動し、腕をのぼり背骨に沿って降りていく。

腰の辺りまで降りた手は、そのまま藍の方へと引き寄せられた。



「…あっ…あいっ…も、うっ…」

「…何…もう降参…?」

「だっ…て…外に聞こえっ…んっ…!」

「…じゃあ…声出さないように我慢しなよ…」




熱い吐息が交錯するほどの唇の近さで、藍はそう妖しく口角をあげると、また唇を塞ぐ。


背に感じる扉一枚向こうの人の気配を藍は察知すると、より一層舌を絡めようとする。


その度に身を捩って声をあげる俺の反応をこいつは楽しんでいる。





「っあ…あ、いっ…意地悪っ…」

「…いくらでも言いなよ。そんな顔で言われても説得力ないけどね。」


そう言うと、濡れた唇を舌で舐められ、ゾクッとした感触に俺は藍の服を思わず掴む。



「っ…も…だめっ…お願…いっ…」


「それって。もう無理止めてください、の意?それとも、もう焦らさないで、の意?どっちにしろそんな潤んだ瞳で言われちゃ止められないんだけど。」


「あ…いっ…んぅっ…」



俺の声に触発されたように、荒々しく俺の唇を割く藍の舌は、唾液を纏いぬるっと俺の口内に容易く侵入してくる。




「…ショウ…もっと…舌…出して…」


「…っは…あ、んっ…」



楽屋ということも忘れかけ、俺も藍もただお互いを貪欲に求め合った。





…いや

楽屋だからこそ、そのスリルに酔っていた。








「…ショウっ…」

「…えっ…あ…」





ピタッと藍の動きが止まったかと思うと、いきなり引っ張られ、俺は楽屋にあったソファに投げ出された。




「…あ…藍…?」





その瞬間、外からドアがコンコンと叩かれた。



「美風さん、来栖さん、出番です。」







スタッフの声が聞こえ、漸く俺の頭は冴えてきた。





「…じゃ、ボクは先行くから。」




藍はそう言い、ソファに投げ出されたままの俺を置いて外に出ようとする。



「えっ…いや、俺も行く…」


「…鏡見た?自分の顔。そんな顔他人に見られるの、ボク許せないんだけど。」




“お願いだから、その顔冷めてからきて”と言い残し、俺の返事も聞かずに藍は楽屋から出ていってしまった。


「…鏡…って…」


藍に言われ、俺は楽屋にあった鏡を覗いてみる。



そこには緊張なんかよりももっと酷い顔が映し出されていた。







「…俺…藍の前だとこんな顔…してんのか…?」








…ありえねぇ…


そんな羞恥が顔を中心に纏い、余計に熱くなった。








「…全部…藍のせいだろ…くそっ…」









楽屋から出られねぇよ…




俺は楽屋のソファに座り込み、真っ赤であろう顔を隠すようにさっきまでの緊張を思い出そうとした。









緊張なんかより…


こっちの方がたち悪いわ…



ばか藍……………













─END─
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