短編BL
□ファーストキスはとっておいて
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─トキヤside─
翔が目をつむるとは思っていなかったのが事実で。
目をつむった後、ああいう風に名前を呼ばれるのは不意打ちであり反則であり。
よく耳で我慢出来たな、と
自分の理性を誉めたいところだ。
「…よく我慢出来たねイッチー。」
部屋を出て、突き当たりを曲がろうとしたところ。
柱の陰からレンが出てきた。
「…聞いていたのですか。」
「…まぁ…ちょっと気になってね。」
「…あれぐらいは、許されるでしょう。」
「俺だったら…まぁ食ってたかな。」
「くっ…!?!?」
驚愕した私を見て、レンはクスクスと笑う。
「冗談だよ冗談。」
「…貴方が言うと冗談に聞こえないんですよ…」
「ま、それでもおチビちゃんには刺激的だったんじゃないかな。」
確かに、あの後の翔の反応からして、今も座り込んでるでしょう。
「…明日、どんな顔してイッチーに会うのかねぇ」
「私はいつも通り接しますよ。くれぐれも、変なこと言ったりしないでくださいね。いくら弄りがいがあるからって…」
「あーはいはいわかってるって。」
…この人は本当に解っている
のでしょうか…
「貴方と話していると…頭痛くなります…」
「俺は楽しいよ?」
「…そうですか…では、失礼します。」
「ん、また明日。」
レンの言葉を聞き、私は部屋へと戻ろうとした。
「…そういやイッチー。談話室で本読んでたんじゃないの?」
「…………」
迂闊でした…
談話室に本を忘れてきたようです…
「…ぷっ…っははっ…」
「…何がおかしいんですか…」
「いや…イッチーも相当おチビちゃんに惑わされていたというか…誘惑されていたみたいだね…」
「…黙ってください。」
この男は…
ずけずけと人の心を読み漁る…
「あれ、イッチー。本取りに行かないの?」
「今行っても翔がいます。私はもう寝ます。」
「はいはい。おやすみ。」
今談話室なんかに行ったら折角抑えた理性が爆発します。
それに翔は、私よりお似合いの相手が見付かります。
…絶対、に。
─END─