進撃の巨人

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あいつ、エレンが俺の班に所属して二日目、俺はエレンを私室に呼び出した
一日目は顔を良く見ていない、だからあの時と変わらずにエレンがそこにいるのか不安だった

「相変わらず、らしくねぇな…」

誰もいない私室で一人呟く
一日目の反応の限り、あいつは俺を覚えていない
それでも、あの時消えた光がそこにあるのか、ただ俺は、安心という名の気休めが欲しかった
俺が求めているものはそこにあるのだと

しばらく考え込んでいると、ぎこちないノックの音が聞こえた
扉の外から漂う雰囲気に、一瞬でエレンだと分かった
どうやら俺はあいつが思っている以上にエレンの事が好きらしい

「誰だ」

分かっていてもあえて聞く
ここでは「兵長」だからな

「エレン・イエーガーです」
「入れ」
「失礼します」

そのまま部屋に入るように促すと素直に入ってきたエレンを見つめる
ああ、こいつだ、エレンはここにいる
生きて、また俺の前に立っている
バレないようにそっと目を伏せる

「あの、兵長」
「何だ」
「えっと、何の用でしょうか…?」

少しでも、冷静に、話をする
感情を出さないようにしながら
そして、問いかける

「なぁ、エレンよ」
「はっ、はい!」

その名を呼ぶのに、感情を込めないで言うのは難しかった
抑えて呼ぶと、自然と声は低くなった

「てめぇは他の世界で自分が死んでたらどうする」
「……えっ、他の、世界、って…」
「早く答えろ」

聞いても意味のない質問だと分かってる
俺が望む答えをこいつが持っているはずが無いと
それでも聞かずにはいられなかった

「よく、分かりません……」
「……そうか」

俺は椅子から立ち上がって、分からない、そう言うエレンの前に立つ
そしてじっと見つめて言った

「俺が分かるか、エレン」

自分でもどんな顔をしているのか分からない
きっと抑え切れていないのだろう
自分の感情を、悲しみを
そんな俺を前にして、エレンは困惑した様子で言った

「質問の、意味が、分かりません…っ」

答えは曖昧で、苦しそうな言い方だった
やはり覚えていないのか、頭の隅でぼうっと考えた

「そうか……」

あまりにも情けない声が出たと、自分でも感じる
顔を逸らして溜息をついた
すると、エレンが立ち去ろうとする気配がする
顔をそちらに向けると、背を向けて立ち去ろうとドアノブに手をかけようとするエレンがいた
その光景を見た瞬間俺はとっさに手を動かした

「っえ…?」

困惑するエレンの声が聞こえる
そして俺は冷静に、静かに言った

「誰が帰っていいと言った?」

逃がさない、離さない、ここから
自分自身で分からないほどに俺の腕は少し、震えていた

思い出して出会った
(俺の前から消える事は)
(もう絶対に許さねぇ)
(俺から離れるな、エレン)

腕を掴んで離さない

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