[続]初恋cherry.(1〜77)
□76話
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春、私達は大学を卒業した。
卒業後は、私はOLとして会社勤め、諸星くんはプロのバスケット選手に。
愛知に帰ってきた諸星くんは、駅前のアパートで1人暮らしをしている。
私はてっきり実家に戻るのかと思っていたら、
『1人暮らしの方が気楽だし、咲季と2人だけになれる場所が欲しいから』って。
それを聞いたときの私の顔、ゆるゆるに緩んでたと思う。
平日はそれぞれ仕事を頑張って、週末は諸星くんの家で過ごしたり外でデートをしたり、後はもちろん諸星くんの試合の応援に行ったり。
遠征や合宿で会えないこともあるけど、大学の4年間遠距離をしていた私達にとって、それはそんなに大きな問題じゃない。
もちろん寂しいけど、自分の時間の過ごし方みたいなものを遠距離をしていた中で学べたと思う。
初めて社会に出て世間の厳しさを知って、学生時代どれだけ環境に恵まれているか痛感した。
それでも仕事には凄くやりがいを感じているし、新しい出会いにも感謝しながら充実した毎日を重ねて……
そして、大学を卒業して2年、諸星くんと付き合って6年が経った。
プロ2年目の諸星くんは、レギュラーメンバーとして試合で活躍してる。
試合の出場回数が増えるに伴って女の子の声援も増えたから、私はちょっとヤキモチ焼いてたり。…秘密だけど。
週末…
今日は諸星くんの試合はなくて、家でまったりデート。
「はい、コーヒー」
「ん、ありがと」
諸星くんはコーヒー、私は紅茶。
テーブルにはお揃いのカップが並んで、ソファにはピッタリ寄り添った諸星くんと私。
テレビを観ながら最近あったことを話して、たわいもないことで笑い合う。
諸星くんの隣に居るとドキドキして、でも凄く落ち着けて、居心地が良くて……この気持ちは何年経っても変わらない。
「なあ咲季、目瞑って?」
「目?」
テレビがCMに変わったタイミングで諸星くんが口を開いた。
何でだろうと疑問に思いながらも言われた通りに目を瞑ると…
「もう開けて良いよ」
すぐに声がかかって目を開く。
「これなーんだ!?」
「……あっ…」
私の目の前にぶら下がるそれ。
諸星くんの手には、、ミサンガ。
黒とライトグレーと、深い赤。
忘れもしない、私が高校生のときに諸星くんにあげたものだ。
この後勢いで告白して振られるっていう苦い思い出はあるけど……
体育祭のときにこのミサンガが諸星くんの足についてて、ユッちゃんと大喜びしたっけな。懐かしい…
付き合うようになってからもしばらくはつけてくれてて……
いつの間にか見なくなったから切れちゃったのかな、なんて思ってたんだけど…
「まだ持っててくれたんだ…嬉しい」
「当然!咲季に初めてもらったプレゼントだし。これさ、ココ、もうちょっとで切れそうなんだ」
「あ、ほんとだ」
編み込まれた糸の一部分がほつれていて、今にも切れそうになっている。
「ミサンガって、切れたときに願いが叶うって言うじゃん?」
「だからさ、どうしても叶えたい願い事があるときのためにとっておいたんだ」
「よっ」
諸星くんがミサンガを引っ張ると、ほつれていた糸がプチッと切れる。
「さて問題です」
「俺の願い事、何でしょう?」