[続]初恋cherry.(1〜77)
□71話
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ガチャ、と鍵が開く音がして、パタパタと小走りで玄関に向かう。
「咲季、ただいま」
「おかえりなさい」
「遅くなってゴメンな?」
「ううん、大丈夫だよ。お疲れさま」
靴を脱ぐ前にチュッとキスをくれる諸星くんの顔は少し赤くて。
「お酒、いっぱい飲んだ?」
「ん、そんなにかな。三井はベロンベロンになって土屋にかつがれて帰ったよ」
「わ、大変だね」
「まあなー、相当悔しかったんだろ」
「…うん、惜しかったね…でも!準優勝もすごいと思う!」
髪をクシャって撫でられて、もう一度キスが降ってくる。
唇が離れて、
「応援してくれて、ありがとう」
諸星くんは優しく笑ってくれた。
それでも、諸星くんから悔しさが伝わってきて…胸がギュッと切なくなった。
「咲季、ここ来て」
部屋に入るなり諸星くんがベッドに座って両手を広げる。
私は立ったまま諸星くんの頭を抱え込むように抱き締めた。
「諸星くん、お疲れさま」
諸星くんは私の胸元に顔をうずめて腰に腕をまわすと、少しの間、何も言葉を発さなかった。
キャプテンとしてチームを引っ張って、誰よりも勝利にこだわって…
優勝を目指して頑張ってきたんだもん…悔しくない訳がないよね…
私に気の利いたことなんて何も言えないけど、お疲れ様の気持ちを込めて、ギュウウウって力いっぱい諸星くんを抱き締めた。
「咲季、苦しい」
「ごっ、ごめんなさい!」
慌てて離れようとしたけど、諸星くんの腕は私の腰にまわったままで。
「嬉しいから、もっと」
私の胸元に頬を寄せて甘えるように見上げてくる諸星くんに、愛しさが込み上げてくる。
いつも諸星くんが私にしてくれるみたいに頭をなでると、彼は気持ち良さそうに少しだけ目を細めた。
「優勝して咲季に格好良いとこ見せたかったな」
「諸星くんが、一番格好良かったよ?」
「牧よりも?」
「うん、牧さんよりも」
「だよな、知ってる」
「ふふっ」
こんな、いつも自信たっぷりの諸星くんが大好きだ。
それだけ努力してること、知ってるから。
「牧のやつ、プロでリベンジだな」
「うんっ!」
ニッと笑う彼を見て、いつもの諸星くんだ、って安心した。
「さっ、風呂入ってこようかな」
諸星くんがベッドから立ち上がる。
………!
「あ、咲季先に入る?」
………
「あっ、あの、あのね、」
………言えっ!言うんだ私!
「い、い、一緒に、入る?」
「……マジで?」