[続]初恋cherry.(1〜77)

□68話
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今日は、諸星くんと付き合って4年の記念日。


今年も諸星くんに会いに行って一緒にお祝いすることになっていて、東京に向かう新幹線の中で流れていく景色をぼんやりと眺めている。


諸星くんに会える日は毎回飛び跳ねたくなるくらいウキウキして嬉しくてたまらなかったけど、今回だけは少し気が重い。

こんな気持ち、初めてだ。



体調も優れないし、何より、生理もまだこない。

調べることも怖くてできてない。

妊娠してないってわかったら安心できることもわかってる。

でも、もし妊娠してたら……?

本当のことを知るのが、怖い。


諸星くんにも、言えてない。

夏バテ気味なんだ、とは言ってあるけど…

体調悪いんだったら無理しなくても良いよって諸星くんは言ってくれたけど、会いたい気持ちはもちろんあるから。

大好きな諸星くんの顔が見たい。


あと、ちゃんと話さなきゃって思ってる。



諸星くんの家に着いて、彼が部活を終えて帰ってくるのを1人待つ。


シンとした部屋に1人でいると悶々と考えてしまうからテレビをつけてみるものの、結局耳障りに感じて電源を切った。


頭がボーッとする……

最近は夜の眠りも浅くてあまり眠れていない。

新幹線で寝ようって思ってたけど、ぐるぐる考えていたら眠れなくて。



ごはん、作って待ってなきゃ…

でも、身体が重い。


どうしよう…

少しだけ、失礼します…


どうにも頭が回らなくて、身体もしんどくて、諸星くんのベッドに横になった。


シーツから諸星くんの匂いがする。

いつも私を優しく包んでくれる、大好きで、安心する匂い。


諸星くん、大好き、大好き、だいすき…


少しずつまぶたが落ちていくのが自分でもわかった。

寝ちゃダメだって思いながらも、それに逆らうことができなくて……





「…ん………」


…あ、私、寝てた……

どのくらい寝てたんだろう…起きなきゃ…ごはん、作らなきゃ…


「…っ!諸星くん!?」

目を開けると、目の前には諸星くんの顔があって。

あまりの驚きに、一気に目が覚めて飛び起きた。


「あ、起きた。咲季ただいま」

「諸星くん、いつの間に帰ってたの?」

「ん?5分くらい前かな」

「わっ、ごめんなさい、私、寝ちゃってて…」

「良いよ、気持ち良さそうに寝てたから寝顔見てた」


寝顔を見られていたことは恥ずかしいけど、優しく笑う諸星くんの姿にキュンとときめく。

やっぱり好きだなあって、改めて思った。
わかりきってることなんだけど、再確認。


「咲季聞いてよ、今日さ、アイツらを来させないことに成功!」

「あっ、私、ごはん…」

「あ、作れなかった?全然良いよ、どっか食べに行こうか」


さっきまでモヤがかかっているみたいだった頭が、眠ったことで少しスッキリして、我に返った。


….…そうだ

諸星くんに会えたことに喜んでる場合じゃない。


話さなきゃ…


「諸星くん、あの、私…」

「あ、体調平気?俺が何か買って来ようか?」


今、言わなきゃ、もう言い出せない気がする。


「っ、違うの……あの、私…」

「咲季?」


「ごめ…私、私ね、ごめ、なさ…っ」


すぐ泣いてしまう私は、ズルイ。

諸星くんは、泣き虫な私のこと好きだって言ってくれるけど、今は泣くときじゃない。

ちゃんと、ちゃんと言わなきゃ。


「咲季?どうした?」

私の手をキュッと握ってくれる。

諸星くんは、優しい。


「っ、ひっ、ひっく…」

「良いよ、ゆっくりで」

こんなにも、優しい。

そんな諸星くんのこと、困らせたくない。

大好きだから。

すっごく、すっごく、大切だから。



頭の中も、顔も、グチャグチャでわけがわからない。

パニックで、言葉も出なくて。

ただただ涙が出て、泣きじゃくる。


そんな時、、



『ちゃんとぶつかれや』



南さんに言われた言葉が頭をかすめた。



『あの…ひとつ、聞いても良いですか?』

『何や』



『諸星くんは、私のこと、どんな私でも全部受け止めてくれると思いますか?』


『はっ…そんなん……』



『決まっとるやん』


『わざわざ東京から俺にヤキ入れに来るくらいあんたのこと好きなんやから』


『信じたれや』




「……っ……ちゃん」

「ん?」


「…あか、ちゃん……」



「赤ちゃん、できたかもしれない」

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