[続]初恋cherry.(1〜77)

□61話
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「諸星せんぱーい!」

………


「諸星先輩!一緒にお昼しましょうよ!」

「…土屋と三井も一緒でも良い?」

「はい!」

…………



「ぎゃっはっはっは!」

三井の爆笑が部室に響く。

「いやぁ〜アイツすげぇガッツあるなぁ〜名前何つったっけ?」

「…橋本美緒さん」

「そうだ!橋本美緒!“美緒、諸星先輩と友達になれてすっごく嬉しいですぅ〜!”って、何キャラだよアレ」


三井が橋本さんのモノマネをする。

やめろ……頭痛くなる。

いや、悪い子じゃないんだ。
普通に良い子だと思う。

ただ、すげえパワフルというか、何て言うか……すげえ。


「あの子、よく練習見に来とったよ?」

「土屋よく見てんな?俺ギャラリーの女全員同じ顔に見えるぜ」

「三井クンらしいなあ」

へぇ、そうなんだ…
俺普段ギャラリーの方見ないからなあ。



この間俺に告白してきた橋本美緒さん。

告白されて、断って、友達になりたいと言われてOKした。


そしたら彼女、毎日何かしらの理由をつけて俺に会いに来るようになって……

今日みたいに昼メシに誘われることもあれば、練習終わりに一緒に帰ろうと言われることもある。


友達ならOKだと言ったのは自分だ。
普通に会話する分には何の問題もない。

ただ、ちょっとばかし行き過ぎなような気もしなくもない…

異性と2人きりというのは周りや本人に誤解を招くタネになるから、基本的には三井や土屋も一緒に。

でもなあ……


咲季には今回のことは言ってない。

今回に限らず、今までも告白されたことは特に言ってきてない。
全部断ってるし、やましいことは何もないから。

ただ、今回のはどうだろう…と疑問に思う。
もちろんやましい気持ちは一切ないけど、普通かと言われれば少し違う気がする。

でも、今は咲季にとってすごく大事な時期だから余計な心配はかけたくないのが本音で。


うーん、でもさ、逆の立場だったらどうだろう。

咲季が誰かに告白されて、断ったけど友達にはなって、毎日ソイツが咲季の周りにいるの。

………ダメだ。

そんなことあったら俺嫉妬で狂うかも。

ダメだダメだダメだ。


うん、今のままじゃダメな気がする。


翌日、

例によって講義の合間に俺の所へやって来た橋本さんに

「あのさ、橋本さん」

「美緒で良いです!」

「あー…美緒ちゃん」

「はい!」

「俺、彼女いるって言ったよね?」

「はい!タメで3年付き合ってる彼女さんですよね!」

「そう。別れる予定、ないよ?」

こんな言い方したら可哀想かもしれないけど、この子とどうこうなるようなことはこの先ない。言い切れる。

だから俺以外にも目を向けた方が良いと思うんだけどな…


「はい!美緒、諸星先輩とずっと話してみたかったんです!だから告白はダメだったけど、こうやって友達として仲良くできて超幸せです!」

「…そっか」


“友達”という言葉を使われたらもう何も言い返せない。

俺は女友達も普通にいる。
橋本さんにしたって、“俺に懐いてる後輩”だと思えば普通なのかもしれない。

でも、もしかしたら咲季のこと傷つけるんじゃないかと思うと心が苦しい。

誰よりも大切だから、傷つけたくない。


ハァ、どうすれば良いんだ…

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