[続]初恋cherry.(1〜77)

□56話
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『ちょっ!ちょっと待って!!!』



「えっ?」


諸星くんが来てくれた!


でも、どうしよう…

めちゃくちゃ嬉しいんだけど、だって私スッピンだし、頭ボサボサだし、おでこには冷却シート貼ってるし…!

風邪引いて寝込んでるとはいえ、こんな姿で会うのは正直戸惑う。


「咲季、入るよ?」


「えっ!?ちょっ!まっ…!」


ガチャ、とドアノブがひねられたのがわかって、私は慌てて布団の中に潜り込んだ。


パタン


トアが閉まって、諸星くんがベッドに近付く足音がする。



「咲季、風邪大丈夫?」


「うん、大丈夫……今日はゴメンね」

布団の中でモゴモゴ話す私。


「仕方ないよ。ねえ、咲季出てきてよ。…くくっ」


「…私、頭ボサボサだよ?」

「病人が何気にしてんの」

「おでこに冷えピタ貼ってるよ?」

「うん、ちょっと見たい」


「ほら、早く出てこないと布団剥がすよ?」

「……うー、、はぃ」

観念して布団から出ると、


「ははっ!本当だ、ボサボサ」

「っ!だから言ったのに〜〜」

慌てて両手で髪の毛を覆ったものの、時すでに遅しで。


「ゴメンゴメン、急に来た俺が悪かったよ。でも心配でさ」

諸星くんが笑いながらベッドに腰掛ける。


「熱は?」

「計ってないけど、もう微熱だと思う」

「そっか。うん、ちょっと熱いな」

私の頬を諸星くんの大きな手が包む。


「ふふ、手、冷たくて気持ち良い」

「外寒かったからなあ」


諸星くんの顔を見てたら、風邪を引いていたのが嘘みたいにどんどん元気が出てくる。私って、何て単純。

だって私にとって諸星くんは、どんな風邪薬よりも絶大な効き目があるんだもん。



「あ、咲季、あけましておめでとう」

「あっ!あけましておめでとうございます」

「今年もよろしく」

「うん、こちらこそ」


顔を合わせて新年の挨拶ができた。

今年は無理かなって思ってたから本当に嬉しい。

でも……


「一緒に初詣行きたかったな…」

つい口から出てしまった。


「ごめっ、ごめんね!私のせいなのに!…ごめんなさい、、」

私が風邪を引いたから行けなかったのに、こんなこと言ったら諸星くんも困っちゃうよ。最悪だ、私。

もう…何で風邪引いちゃったんだろう。


自己嫌悪と気まずさでうつむく私に


「咲季は初詣で何をお願いするつもりだった?」

「えっ…?」


諸星くんが、私の顔を覗き込んで聞いた。


「全部は無理かもしれないけどさ、叶えられることは俺が叶えてあげるよ」

「あ、でも咲季は言ったら叶わなくなるって言ってたか…」


“どうする?”ってニヤリと笑う諸星くんの自信あり気な表情を見ていたら、彼ならできるんじゃないかと思えてしまう。


「えっと、、家族が健康で過ごせますように…とか、」

「うん。さっき挨拶したときすげえ元気そうだったから大丈夫」


「友達とこれからも仲良くできますように」

「咲季は皆に優しいから、友達も咲季のこと大好きだよ」

「でもさ、男にはあんまり優しくしなくて良いよ?三井と土屋とか、あとは〜三井と土屋とか?」

「あははっ」

「おっ、咲季元気になってきた!」


「さ、あとは?」


「あと、は……あとは、諸星くんとずっと一緒にいられますように」


「そのお願い、待ってました」

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