[続]初恋cherry.(1〜77)

□50話
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私が向かった先は、学食の入口にある自販機。


ここは、私が諸星くんと2回目に話した場所。

前日に体育館で初めて話して、その次の日にここに諸星くんが居て…

諸星くんの横を通り過ぎようとしたら、諸星くんが振り向いたときにぶつかって、私転んじゃったんだよね。

それで諸星くんが腕を掴んで起こしてくれて……


今でも鮮明に思い出せるよ。



「見つけた」


背後から声がして振り向くと


「諸星くん!」


「探したよ。気付いたら居なくなってたからさ」

「あっ、ごめんなさい…お取り込み中だったし、皆のジュース買おうと思って」

「そっか、でも俺が買うよ。俺が負けたから……っ、あームカツク藤真の野郎!あの勝ち誇った顔、今思い出しただけでも腹立つ!」

さっきのフリースロー対決の結果がまだ尾をひいているみたいで、“藤真のはおしるこにしてやる”なんて言いながら諸星くんがジュースのボタンを押していく。

「あっ!諸星くんのは私に買わせて?」

「えっ、俺買うから大丈夫だよ」

「ううん、今日すごく楽しかったから…誘ってくれたお礼」

「そっか、ありがとう。じゃあポカリで」




「ここも懐かしいなあ〜」

ポカリを飲みなら諸星くんがぐるりと周りを見渡す。


「えっ?…あ、諸星くんはよく学食でお昼食べてたもんね」

「うん、そうだけどさ、ちょっと違うかな」


「ここ、俺と咲季が2回目に話した場所だろ?」


「…っ!覚えてて、くれたんだ?」

「当たり前じゃん」


「俺が振り向きざまにぶつかって咲季を転ばせたんだよな。顔見たら前の日に体育館で会った子だったからさ、ビックリしたよ」

「まさかあの時の子と付き合うことになるとは思わなかったなあ」


本当にそうだよね。

それまで諸星くんとの接点なんて全然なかったのに。

今では……


「今ではその子が一番大事な人になったんだから、偶然ってすごいよなあ」

「うん」


私、この出会いは必然だったのかなあ、なんて思うことがあるんだ。

こんなこと、恥ずかしくて言えないけど…運命だったのかなあ、って。


「多分アレだな、運命だったんだよ」


!!!


「咲季はそう思ったことある?俺さ、実は結構思ってたりするんだよね………やば!恥ずい!そろそろ体育館戻ろうか!?」

珍しく照れて顔を赤くした諸星くんが体育館へ向かって歩き出す。



「っ、諸星くんっ!」


私は、とっさに彼を呼び止めて


「私もっ!私も運命って思ってるよ!」


思わず叫んだ。


顔から火が出そうだけど……でも、私も伝えたかったから。

“同じこと思ってるよ”って。



諸星くんは少しだけ驚いた表情を浮かべたあと

「やっぱり?」

ニカッと笑って

「行こうか」

私の手をとって歩き出した。




体育館に戻ると、牧さんと藤真さんが監督さながらのアツい指導をしていて。


「牧、ポカリ!」

「ああ、すまないな」


「藤真!ジュース買ってきたぞ!」

「おお、サンキュー!…って、これおしるこじゃねえか!ふざけんな諸星!」

「バーカ!お前にはそれで十分だよ」


また一悶着あって……

皆さんに挨拶してから愛和学院を後にした。


神奈川に帰る2人を見送るために駅に向かう。

「諸星、今日は世話になったな。咲季さんもありがとう」

「おう、また来いよ。次はバッシュ持ってな」

「こちらこそ。私も楽しかったです」

牧さん、すごく優しかったな。


「今度は東京で勝負しようぜ。咲季ちゃん、諸星に飽きたら俺のとこおいでよ?」

「次は負けねぇからな!あと!咲季にチョッカイ出すなよ!」

「仲良くしてくれてありがとうございました」

藤真さんもすごく気さくに話してくれて、今日は素敵な1日になったなあ。



改札を通る2人に手を振っていると、藤真さんが振り向いて


「あ、そうだ諸星!お前、プロチームから何個か話来てんだろ?良かったな!」



………え?


藤真さんはニッと笑って、“じゃあな”って牧さんと2人、人混みの中に消えていった。

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