[続]初恋cherry.(1〜77)
□11話
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夏祭り当日。
今年新しく買った藤色の浴衣をお母さんに着付けてもらって、自宅で諸星くんを待つ。
いつもみたいに駅で待ち合わせかと思っていたら、“迎えに行くよ”って言ってくれて。
『咲季の浴衣姿、俺が最初に見たいから』
って。
電話で言われたときは耳が溶けるかと思ったよ……
何度も何度も、自分の姿を鏡でチェックして、お母さんに“おかしくないかな?”って聞いた。
お母さんには、“はいはい可愛いですよ〜”って呆れたように返される。
それよりもお母さんは久しぶりに諸星くんに会えるのが楽しみみたいで、いつもよりお化粧に気合いが入ってて。
あの、私のデートなんですけど?
ピンポーン
インターホンが鳴ると、私とお母さんが競うように小走りで玄関へ向かう。
結局、浴衣で走りにくい私はお母さんに負けて、お母さんがドアを開けた。
「諸星くんいらっしゃい」
「こんにちは。ご無沙汰してます」
ドアの向こうには、夏服に身を包んだ諸星くん。
ああ、夏服も格好良い…
「諸星くん」
「咲季、久しぶり」
「じゃあ、行ってくるね」
「失礼します」
「はいはい、気をつけてね」
家を出て、駅に向かう。
「歩くスピード、大丈夫?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
浴衣の私を気遣ってくれる。
諸星くんは相変わらず優しくて、素敵すぎるよ。
「浴衣、似合ってる。可愛い」
「あっ、ありがとう」
可愛いって!可愛いって!
嬉しいよぉ〜〜〜
新しい浴衣買って良かった!
「やっぱり浴衣だと雰囲気違うなあ。大人っぽいっていうか」
「そうかな?ふふ、嬉しいな」
「……可愛すぎて抱き締めたいところなんだけどさ、せっかくの浴衣が崩れたら困るから我慢する」
「…っ、うん」
浴衣なんか崩れても良いから抱き締めてほしいって思ってしまったけど、そんなことを言う勇気なんてない私は、言葉を飲み込んだ。
「原田さんと会うの久しぶり?」
「うん。春から会ってないから久しぶりなんだぁ」
「原田さんの彼氏、楽しみだな〜どんな人なんだろ?」
「ユッちゃんが選んだ人だからすっごい格好良い気がする!」
「確かに。原田さん面食いそうだもんな」
ユッちゃんと彼氏さんとは、夏祭り会場の入り口で待ち合わせしてて。
会場に近づくにつれて、私と諸星くんの中でのユッちゃんの彼氏のハードルはめちゃくちゃ上がっていた。