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□35話
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「そろそろ行こうか」


お会計を済ませて、手を繋いで歩き出す。

着いた先は商店街で、外は薄暗くなり始めていた。


「もうちょっとで着くよ」


進むにつれて、人がどんどん増えてくる。

諸星くんに手を引かれて、人混みの中、彼の後ろを歩く。

私には背の高い諸星くんの背中しか見えてなくて、この先に何があるのか見当もついていない。




「あ、見えた。上!」

「え?………あっ!」



見上げると



大きな、ツリー。



人混みを掻き分けて、ツリーの近くに進む。

キラキラの飾りとイルミネーションが、眩しい。


「す、ごい……」

「バスケ部のヤツに聞いたんだ。ここが毎年ツリーとイルミネーションが綺麗だって」


「すごい…綺麗。諸星くん、ありがとう」

「いいえどういたしまして。咲季と見れて良かったよ」



諸星くんの言葉に涙が出そうになった。

最高のクリスマスになったよ、ありがとう。



しばらくツリーを眺めて、商店街を抜けた。




「スーパー寄らなきゃなー」

「そうだね」

「彼女がご飯作ってくれるって言ったら、母さんから軍資金もらった。これで食材買えって」

「えっ、何か悪いなあ…」

「大丈夫大丈夫。俺すげえ食うからさ、いっぱい作ってよ」

「うんっ頑張る」



スーパーに着いて、諸星くんがカートを押す。


「何作るの?」

「えっと、ハンバーグ、好きかな?」

「好き好き!大好き!」

「オムライスは?」

「大好物!」

「あと、ポテトサラダとコンソメスープ」

「やべー!全部好き!すげえ楽しみなんだけど!」


ニコニコしながらカートを押す諸星くんは、今にもスキップしそうな勢いで。

こうしてると、新婚さんみたいだなあなんて思っていると


「何か新婚さんっぽくない?」
諸星くんが振り向いて言う。


たまに、諸星くんはエスパーなんじゃないかと思う。

あと、やっぱり、運命?



スーパーで買い物をして、諸星くんの片手には買い物袋、片手には、私の手。

当たり前のように荷物を持ってくれて、手も繋いでくれる。

こういうとき、付き合ってるんだなって実感する。



「ショウ、ただいま」

「ショウくん、こんばんは」


諸星くんの家に着いて、ショウくんに挨拶して、そのまま家に入ろうとする諸星くんに


「あ、諸星くんちょっと待ってくれる?」

「ん?」


鞄から包みを取り出す。


「ショウくん、メリークリスマス」

「ショウに?」

「うん、気に入ってくれるかな?」


犬用のロープのオモチャをショウくんに渡す。

クンクンと数回嗅いだあと、早速くわえて噛んだりブンブン振り回して遊んでくれた。


「良かった………あの、諸星くん?」

心なしか口がへの字に曲がっているような…

「クリスマスにまでヤキモチ焼く俺ってどうなの」

「…っ、ふふっ」

「あーもう!やっぱりコイツ俺のライバル!」

「ふふ、お家、入ろう?」

「ショウ!今から咲季を独り占めすんのは俺だかんな!羨ましいだろ!」



ショウくんはオモチャに夢中で聞いてなくて、私はまた笑ってしまった。

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