初恋cherry.(1〜32)
□27話
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駅から自宅へ戻って、ショウの散歩に出かける。
住宅街を抜けて河川敷に出ると、リードを外してやる。
河川敷を駆け回るショウを座って眺めながら、今日の出来事を振り返る。
初デートに浮かれながらも、練習は頑張った。
ニヤニヤしてるって相当からかわれたけど、無理もない。
すげえ楽しみにしてたから。
校門で川瀬さんが待っていたときはビックリしたけど嬉しくて、その場で抱き締めそうになった。
お弁当を作ってくれてて、しかもすげえうまいし、ポニーテールを揺らしながら一生懸命シュートする姿が可愛くて、シュートが入って喜ぶ彼女をまた抱き締めそうになったけど、我慢した。俺、偉い。
俺の家来る?ってつい言ってしまったけど、カチンコチンに緊張しながらも着いてくる彼女が愛しくなった。
下心はなかったけど、いや、嘘。ちょっとあったかも。
家に来てからも、いちいち可愛くて、我慢できなくなって抱き締めた。
抱き締めたらもっと我慢できなくなって、キスした。
抱き締めると柔らかくて良い匂いがして、少し震える唇は、あったかくて柔らかかった。
俺の中のスイッチが入ってしまわないうちに、すぐ離れた。
のに、
川瀬さんは俺の服を掴んだまま離さなくて、潤んだ瞳で見つめてくる。
その姿はもう反則って感じで、もう1回だけって心に決めて口づけた。
ポケットから携帯を取り出して、待ち受け画面を眺める。
口元が緩んだのが自分でもわかって、慌てて手で覆った。
「ショウ!」
ショウを呼べば、俺のところに駆け寄ってきてハッハッハッと舌を出している。
「お前さ、あんまり俺の彼女にベタベタすんなよ?」
まだ根に持っている俺は、本当にガキだと思う。
頭を撫でれば、ショウはワンと1回吠えた。
お前、本当にわかってんのかよ?
参ったな、俺、めちゃくちゃ好きになってんじゃん。
携帯の着信音が鳴る。
それは川瀬さんからのメールで。
『今帰ったよ(*^^*)今日はとっても楽しかったです!お弁当食べてくれてありがとう♪』
また口元が緩むのがわかった。
もう彼女を抱き締めたい。