初恋cherry.(1〜32)
□24話
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「俺、着替えてくるから適当に座ってて」
「はっ、はい!」
ぎこちなく返事をする私に、諸星くんはくっくっくと笑って部屋を出て行った。
ど、どこに座れば良いんだろう…
迷った末に、部屋の真ん中にある小さな机の隣にちょこんと座って、部屋をぐるりと見渡す。
ここが諸星くんの部屋かあ。
綺麗にしてるんだなあ。
モノトーンで統一された部屋の壁には、外国人のバスケ選手のポスターと愛和学院のユニフォームが飾られてあった。
諸星くんのユニフォーム姿、格好良いんだよなあ…
ぼんやりと眺めていると、部屋のドアが開いた。
「お待たせ」
「あ、ううん」
お茶の入ったコップを乗せたトレーを持った諸星くんは、私服に着替えていて。
半袖のポロシャツに7分袖のカットソーを重ね着して、デニムパンツを履いていた。
私服、初めて見た。
格好良すぎる…!
「ん?どした?」
しまった!
あまりの格好良さに、ガン見してしまっていた。
「いえっ、あの、か、格好良い、な、と思いまして…」
顔を真っ赤にして、口に手を当てて、どんどんうつむく私。
「あはは、今日褒めすぎ。照れるじゃん」
「す、すみません」
だって、格好良いんだもん。
「川瀬さんも、可愛いよ?」
「えっ」
顔を上げると、優しく笑う諸星くんが居た。
「服装もだし、髪型も可愛いなって今日ずっと思ってたよ?」
「バスケもさ、一生懸命してて…やば、俺も顔赤くなってきた」
諸星くんも少し下を向いて、頭を掻いた。
「あ、ありがとう」
「はは、お互い褒め合って何してんだろ、俺ら」
「川瀬さんは進路どうするの?」
「私は、地元の4大に指定校推薦で行く予定だよ。諸星くんも大学だよね?」
「うん、俺は東京の大学かな。2年のときからバスケで声掛けてくれてる大学があってさ」
「スカウトってことだよね?…すごい!」
諸星くん、東京に行っちゃうんだ。
ってことは、遠距離になるんだよね?…寂しいなあ。
「遠距離になるけど、長期休みには帰ってくるからさ」
「私も、遊びに行くね」
「まあ卒業までまだ期間はあるし!俺もバスケ部引退したら時間できるし、いっぱい2人で思い出作ろう?」
「うんっ!」
大丈夫、諸星くんとだったら。
遠距離も、乗り越えられる。