初恋cherry.(1〜32)

□17話
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想いが通じ合った後は、しばらく体育館のスミに2人で座っていた。


「そろそろ、行こっか?原田さん待ってるだろうし」

「あ、うん。…諸星くん、何でユッちゃんの名前、知ってるの?」

実はすごく気になっていた。
さっきも名前呼んでたし。


「ああ、昨日体育祭の片付けしてるときにちょっと話してさ。はは、喝入れられちゃったよ」

諸星くんは思い出したように笑った。

「喝?」

「うん。モタモタしてると川瀬さんを他の男にとられるぞーって。良い友達だね」

「…そうなんだ」

ユッちゃん、何も言ってなかったのに。

私のために…

ユッちゃん…ありがとう。


「よし、じゃあ行こう!原田さんに報告しないとね。はい」

諸星くんが立ち上がって、私に手を差し出した。

「…!」

私は目を見開いて、諸星くんを見上げた。


「…手、やだ?」

子犬のような目で見つめてくる。
そんな目で見ないで…


「や、じゃないよ。緊張、しちゃって…し、失礼します」

諸星くんの手を遠慮がちに握った。

大きくて、ちょっとゴツゴツしてる。


「川瀬さん、手ぇちっちゃ!」

諸星くんが笑いながら歩き出す。

私はその半歩あとを歩く。

心臓が飛び出そうだ。



グラウンドへ着くと、周りの視線が刺さった。

それはそうだと思う。

有名人の諸星くんと、誰?な私が手を繋いで歩いているなんて、つい見てしまうのもわかる。

でも諸星くんは「原田さん、いないね」なんて言いながら平然としている。

やっぱり見られ慣れてる人は違うのかな、なんて思っていたら、ユッちゃんを見つけた。



「ユッちゃん!」

声を掛けるとクラスの友達と一緒にいたユッちゃんが振り向いた。


私達の姿を確認するやいなや

「咲季っ!!!」

私に抱きついてきた。

「咲季〜良かったね〜咲季〜〜」


ユッちゃんには全部お見通しだったみたい。

「うん。うん。ユッちゃんのおかげだよ、ありがとうね」


ユッちゃんが私から離れると

「原田さん、俺、川瀬さんと付き合うことになりました。これからよろしくお願いします」

諸星くんが報告してくれた。


「諸星くん!咲季を悲しませたら私が承知しないからね?咲季を頼んだよ!」

ユッちゃんが諸星くんに人差し指をビシッと突きつけた。


「うん、幸せにするよ」

諸星くんは笑ってた。


私は、そんな2人を見ながら、結婚の挨拶に来た彼氏とお父さんみたいだなって1人想像して、顔を赤くしていた。




私、めでたく諸星くんの彼女になりました。

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