初恋cherry.(1〜32)
□6話
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放課後、ユッちゃんと手芸屋さんに行って、3色の糸を選んだ。
黒とライトグレーと、ポイントで深い赤。
オシャレなユッちゃんにアドバイスをもらって選んだから、色合いは大丈夫なはず!
帰って早速ミサンガを編み始める。
無心になって編んでいると、この間の諸星くんの県大会の決勝のときのことを思い出した。
諸星くんは、相手チームの大きな選手にぶつかって担架で運ばれてしまって。
そのときは心配で心配で、ぐちゃぐちゃに泣きじゃくってしまって……隣にいたユッちゃんにビックリされたっけ。
「咲季は本当に泣き虫だね〜、あんたの王子様を信じなよ」
って慰められて、どうにか最後まで見ることができた。
諸星くんがコートに戻ってきたとき、安心して結局また泣いてしまったんだけど。
諸星くんが怪我しませんように。
楽しくプレーできますように。
勝てますように。
私の想いが、届きますように…
ひと編みひと編み想いを込めて、丁寧に編んだ。
翌日
「お願いユッちゃん!ミサンガ渡すのついてきて!」
私は顔の前で手を合わせて必死にお願いを始めた。
「え〜〜そんなの私絶対お邪魔虫じゃん」
ユッちゃんは顔を歪めて拒否する。
「大丈夫!そんなことないから!お願い!ユッちゃん様!」
「そんなことあるって」
「だって1人じゃ渡せないよぉ〜会話したっていっても自分から話かけたわけじゃないし…」
私はもう半泣き状態。
「はあ〜〜しょうがないなあ。いいよ、でも咲季が自分で話かけて渡すんだよ?」
「うん!うん!ありがとう!ユッちゃん大好き!」
「それは私じゃなくて諸星くんに言いなよ」
「そっ、それは無理!」
放課後、諸星くんが部室に行くまでの間を狙って渡すことにした。
教室の前じゃ人目があってとても渡せないから、部室がある通りの廊下で待ち伏せ。
ユッちゃんは『何コレ、探偵ゴッコ?』なんて言ってるけど、私は至って真剣だ。
待つこと数分…
来た!諸星くん!
良かった、1人だ。
どんどん近づいてくる。
ど、どどど、どうしようどうしよう。
ちゃんと渡すって決めたのに、いざ諸星くんを見ると足がすくんで動かない。
私が固まっていると
「早く行きなっ!」
ユッちゃんが私の背中をトンっと押した。
「わっ!っあの!諸星くんっ!」
諸星くんは私に気づいて
「あ、川瀬さん。どうも」
「ど、どうも」
名前、覚えてくれてる。
嬉しすぎるよ……
「こんなところにいるの、珍しいね。誰かに用事?」
………っ…いけ!私っ!
「…あの、諸星くん!コレっ!どうぞ!」
私は作ったミサンガを差し出した。
「俺に?」
私はコクコク頷いた。
諸星くんは私の手からミサンガを取ってまじまじと見た。
「かっけぇ。これ川瀬さんが作ったの?」
「うん、下手くそで申し訳ないんだけど…あの、手につけるとバスケの邪魔になると思ったから、足につけて欲しいなって思って、長めに作ったんで…っ、インターハイ、頑張ってください!」
言った。言えた!
顔が熱い。きっと真っ赤っかだ。
でも、良かったあ〜
心の中でガッツポーズした。
「ありがとう川瀬さん。頑張るよ」
諸星くんは手に持ったミサンガを顔の近くで揺らしながらニコッと笑ってくれた。
その笑顔、反則だよ諸星くん。
大好きが溢れ出す。
「あのっ、好きです!」
……私、今何て言った?