弱ペダroom

□5話
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「こっ、こっ、こっこっ…」




これは、決してニワトリのモノマネではない。



「こう、こっ、ここっ」



もう1度言うけど、

ニワトリのモノマネでは、ない。




★★下の名前で呼ぼう



これ。

次の項目は、これ。名前。



今まで“名字さん”“石垣くん”って呼び合ってきた。

それを、急に下の名前で呼ぶっていうのは……どうすれば良いの?


“名前で呼んでも良い?”って聞くの?

それとも不意に呼ぶ感じ?



《下の名前で呼び合って、彼との距離をグッと縮めよう》


グッと縮まるなら…ぜひ実践したい!


という訳で、さっきのニワトリもどきに戻るんだけど。

自室で1人、名前を呼ぶ練習中。

1人で口に出すのもこんな調子なのに、石垣くんの前で言えるわけがないよ。


あとな、どう呼べば良いん?


“光太郎”
“光太郎くん”
“光くん”
“光ちゃん”


……ダメだ、照れる。


そもそも石垣くんを下の名前で呼んでる人っていないし。

仲が良い友達は“石やん”って呼んでるから。


じゃあ、私も石やんって呼ぶ?

……いや、でも何か違う気がする。

彼女だからこそ!下の名前呼びなわけだよね。


明日、一緒にお昼食べる約束してるから、、言ってみようかな…



名前で呼んでも良い?

名前で呼んでも良い?

名前で呼んでも良い?


朝から私の頭の中はこのセリフでいっぱいで。

お昼休みまで、授業なんて上の空で何度も何度も繰り返した。


お昼休みになって、石垣くんと向かい合わせでお弁当を食べる。
正直、味なんてわからない。



「ねえねえ」

「ん?」


心臓!止まれ!あ、止まったらあかん!静まれ!静まれ心臓!


「あの、ね?」

「うん」


ほら!今!今!言え!私!



「こっ!…こっこっ、ここっ、こっ」


やっ!ちゃっ!たー!


「何や?どした?」


石垣くんはキョトンとしている。
いきなり何を言い出すの?って顔。
わかる。わかるよ石垣くん。
だって私が一番“何を言い出すの?”って思ってるから!



「や、いやっ、あのな?ニ、ニワトリのモノマネ!最近開発してん!」


……終わった。


「あっはっはっはっ!急に何かと思ったわ!」


石垣くんは爆笑。

そりゃそうだよ。
急にニワトリのモノマネをする彼女がどこにおんねん。

いや、ここにおるんやけども。


「え、えー?似てへん?」

「もうちょい練習が必要やな?」




失敗、しちゃった。


そう何でもうまくいくわけないって分かってるつもりだったけど、今まで順調にきてたぶん、ショックだった。

だって、石垣くんとグッと近づきたかったんだもん。



恋愛初心者のラブラブへの道のりは、遠いなあ………

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