弱ペダroom

□4話
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それから、たまに一緒にお昼を食べるようになって。

向かい合って何でもない話をしてるだけなんだけど、私にはすごく特別な時間で、楽しくて、嬉しい。




「うわ、私これ無理やん」


例の本の次の項目を見て、私のテンションは一気に下がった。

だって……



★★彼と一緒に帰ろう



…無理やん。

石垣くんは自転車競技部に入ってて、毎日遅くまで練習してるから。


残念だけど、石垣くんは部活頑張っとるんやもん。
仕方ない。この項目はとばそう。

そう思いながらも、ざっと文章を読んでみる往生際の悪い私。


……ん?

あれ…?


《彼が部活をしているあなたは、部活の応援に行ってみては?》


これっ!私のことやん!

さすっが!“恋する女子高生に捧ぐ”って書いた本なだけある!



とは言っても、、部活の応援って……
そんなの行っても大丈夫なもんなんかな?

そもそも私、自転車競技ってどんなことするのかもよく知らないし…



『ねぇ石垣くん、自転車競技部ってどんなことするの?』

日課になった夜の電話で、質問してみた。

『そうやなあ〜何て言うたらええかな…俺はレースでエースを1位にするためのアシストって役割なんよ』
『ほんでな、、ええーっと、うーん…口じゃうまく説明できんなあ。…良かったら明日練習見に来る?』

えっ?!!!

『…行っても、ええの?』

『もちろん!話したりはできんと思うけど、実際見た方がわかると思うし』

『わぁ、じゃあ見に行く!』

『遅くなっても大丈夫やったら、一緒に帰らへん?送るし』

わ!わわわ!

『うっ、うん!待ってる!』

『ヤバ、明日ムッチャ気合い入ってまうわ』

わわわわわわわ!!!


すご、すごくない!?
これが棚ぼたってやつ?

だって、部活の応援に行こうとしたら、一緒に帰れることになって……

この本はそこまで見越してんの!?すごすぎ!

私は思わず本を抱き締めた。



次の日の放課後、事前に聞いておいた練習コースに立って、石垣くんが自転車に乗っている姿を見た。


…口をポカンと開けたまま、まぬけな顔をしていたら部活が終わった。


だって、すっごい速かったから。もう、すっごい!
自転車ってあんなに速いの?

石垣くんの姿が見えたのは一瞬。ピュンって、行っちゃう。

その一瞬が何回もまわってきた。
ピュン。ピュン。ピュンって。


「って感じで!ビックリした!」

帰り道、石垣くんに思ったままの感想を伝えたら、

「あはは!ピュンて?あはは!名字さんおもろいなあ」

ケラケラ笑われた。


「だって!すごかったんやもん!」

「いや、嬉しいんよ?気合い入りまくりやったもん、俺」


石垣くんは、すごく素直。

友達のときからそうだった。

私も、ちゃんと伝えていかないとだよね。この間学んだばっかりやん!よし!


「石垣くん、カッコ良かったよ?」


「……ありっ、ありがとう。えっと、ありがとう。いや、何て言えばえんやろ?とりあえず、何や、ありがとう、な?」

「石垣くんうろたえすぎ!どもりすぎ!あはははは!」

「ちょっとほんまアカンわ〜!不意打ちやった!ガチで照れてもうたわ!」

「そんなに照れられたら私かて照れるわ〜も〜〜」

「俺、明日からも頑張れるわ」



楽しくて、嬉しくて、、


私、石垣くんのこと、ムッチャ好きになっとる。


恋って、楽しい!

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