[続]初恋cherry.(1〜77)
□35話
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「咲季?」
「ん?」
お風呂と歯磨きを済ませ、ベッドに入って“おやすみ”を言った直後に、諸星くんが私の名前を呼んだ。
「今日俺が家に帰ってきたときさ、咲季の様子がちょっと変だなーって思ったんだけど…何かあった?」
「えっ!」
これは…多分、私が諸星くんが帰ってきたときにいきなり抱きついたことを言ってるんだよね?
私からあんなことするなんて珍しいから、諸星くんが変に思っても不思議じゃない…
「あの…あれはね?えっと、何て言えば良いんだろう…その、私1人でヤキモチ焼いて不安がってモヤモヤ考えてちゃって…あっ、でももう大丈夫なの!本当に!意味わかんなくてごめんね…」
「ヤキモチ?誰に?」
「う…その、諸星くんのファンの子に……でも!それは諸星くんが魅力的だからこそファンが居るわけで!慣れてたはずなのに久しぶりにそういうの見てちょっと沈んじゃっただけだから…」
「そっか…不安にさせてごめんな?」
諸星くんがすまなそうに私の頬を撫でる。
諸星くんは何も悪くないのに…
「っ、ううん!私こそ1人で勝手に不安がってごめんなさい」
「全然。ヤキモチ嬉しいし。だっていつもヤキモチ焼くの俺ばっかりじゃん?」
「そんなこと…んっ」
“そんなことない”って言おうとしたら、諸星くんに唇を塞がれてそのまま私の上にまたがってきた。
「えっ?えっ?」
「ん?俺が咲季のことどれくらい好きかわかってもらおうと思ってさ」
動揺する私を嬉しそうに見下ろす諸星くん。
これは、もしかして…いや、もしかしなくても、そういうことだよね?
「……だっ!だめっ!」
「…い?」
とっさに顔をそらすと、諸星くんが“何で?”と言いたげに私を見る。
「だ、だって、諸星くん明日試合でしょ?」
今日はゆっくり休んでもらわなきゃ…
「余裕。現役の体力侮らないでよ」
「っ、でも…今日はだめっ」
やっぱり万全の状態でのぞんでほしいもん。
「マジで…」
諸星くんの顔に“ショック”って書いてある。
うぅ、そんな目で見ないで…
「………明日、終わったら、ね?」
「明日勝ったら、ご褒美くれる?」
「……っ、うん、いいよ」
「よっしゃ!絶対勝つから!ご褒美なくても勝つけど!俄然気合い入った!約束な?」
改めておやすみを言って、諸星くんは私を抱き枕のように全身で抱き締めながら
「ああ〜生殺しだ…」
何度も呟いていて。
そんな諸星くんが可愛くて愛しくて、彼の胸の中で幸せな気持ちでいっぱいになりながら眠りについた。