[続]初恋cherry.(1〜77)
□60話
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「大チャン、寂しいならボクが抱き締めたるよ?」
着替えが終わって、メシでも食って帰るかと3人で部室を出て歩く。
「いらねぇよ。デカイ男に抱き締められて喜ぶ奴がどこに居るんだよ」
俺が抱き締めたいのは咲季だけだし。
あー咲季の髪の匂い嗅ぎたい。
あれ、やっぱり俺変態っぽいな。
「諸星、寂しいなら俺のオススメDVD貸してやろーか?ナースのやつ」
「…………借りる」
「ぎゃははは!おめーもただの男だなー!」
ただの男だよ、悪かったな。
溜まるモンは溜まるんだよ。
ナースは白かピンクか水色のどれが好きかっていうくだらない論争をしながら歩いていると、
「諸星先輩!」
後ろから声をかけられた。
振り向くと女の子が1人立っていて。
「あの、話があって……ちょっと良いですか?」
「うん、良いよ」
「大チャン、先に行っとくなー?」
「おう」
土屋と三井が雰囲気を察してその場を離れてくれた。
これから何が起こるか分かってるんだろう。
俺も、声をかけられた理由は何となくわかる。
「私、社会学部3年の橋本美緒といいます」
「あの、私、諸星先輩がバスケしてる姿をずっと見てて、素敵だなって思って………好きです!良かったら付き合って下さい!」
「ごめん。俺、彼女いるから応えられない」
大学に入ってからこういった呼び出しや告白はもう何度目かはわからない。
俺なんかに好意を持ってくれることは、素直に嬉しい。
でも俺には咲季がいるから応えられないし、断ることにそれなりに心も痛む。
「そう、ですか…彼女いるって噂、本当だったんですね」
「うん、ごめんね」
「…じゃあ、、友達になって下さい!」
ショボンとうつむいていた顔をブンと上
に向けた彼女。
「あ、うん、友達なら」
「ありがとうございます!」
このやりとりもそんなに珍しいことじゃない。
今までも最初は“諦めないぞ”と頑張っていた子も居たけど、話していくうちに俺が彼女一筋だとわかると積極的にアピールしてくることもなくなっていく。
まあ、そもそも俺はバスケで忙しくて時間の余裕はないし、学年が違えば尚更会ったり話したりすることもほとんどできないだろう。
……が、甘かった。