[続]初恋cherry.(1〜77)

□57話
1ページ/1ページ

「そのお願い、絶対叶うよ?」


そのお願いに関してはすげえ自信ある。

「だって俺も同じお願いだし、俺、有言実行タイプだからさ、絶対叶う」

「うん、諸星くんが言うなら間違いないね」

“嬉しいな”って小さく笑う咲季に癒される。

風邪引いた咲季のことが心配で来たっていうのはもちろん本当だけど、ただ咲季に会いたかったからっていう方が実際のところは大きい。

やっぱり、普段会えないからさ、俺も寂しいわけで。



「諸星くん!…ちょっ、あの、何、するの?」

「ん?抱き締めようとしてる」

咲季が座るベッドの中央に移動すると、布団の端を持ち上げて顔を半分隠された。

ははっ、すげえ警戒されてる。

布団から咲季のクリッとした目だけが見えて、可愛い。熱のせいかちょっと潤んでるし。

隠れてんの、逆効果。


「っ、風邪、うつっちゃうよ…」

「そんなにヤワじゃないよ」

そう。そんなにヤワじゃない。
ということでちょっと失礼。


「やっぱりまだ熱いなー」

抱き締めると、咲季の体温がいつもより高いのがわかる。

首に顔をすり寄せたら肌がしっとりと汗ばんでいて。

汗と、咲季の甘い匂いがする。


……ヤバい、ヤバい。

今日はそういうのはナシに決まってる。
下の階には咲季の家族が居るし、そもそも咲季は風邪。無理。

頭ではわかってる。
俺の煩悩、どっか行け。


頭の中でグルグル考えていたら、

キュッ

咲季が俺の背中に手をまわした。


あーあ、煩悩、おかえり。


たまらず、顔をすり寄せていた首筋に口付けると

「っ!ちょっ!」

咲季が慌てて俺から身体を離す。

「あのっ!あせ、汗かいてるから!」

「うん、ちょっとしょっぱかった」

「〜〜〜っ!」

「嘘」

「……もぅ」

「ははっ、ゴメンゴメン」


俺の発言とか行動でアワアワする咲季を見るの、結構好きだったりする。
俺のことで一喜一憂するのが嬉しいから。


「なあ咲季、キスしても良い?」

「だっ!ダメだよ!絶対うつるもん!」

「鍛えてるから大丈夫」

「でも……」

「ダメ?」

俺、ズルイよなあ。
こう言ったら咲季が断れないのを知っててやるんだから。


「…うつっても、、知らないよ?」


うん、全然オッケー。
うつるどころか、逆に元気になるから。間違いない。


「あっ、諸星くん待って…」

「ん?」

キスしようと顔を近付けると、咲季に胸を押されて制止された。
あれ?やっぱりダメ、とか?


「あの……ふ、深いの、しないでね?」


……やっば、今のたまんない。

うるうるの目で上目遣いして恥ずかしそうにお願いしてきて…

俺を煽るのがうますぎて困るんですけど。


「うん、了解」


いつもは柔らかくてプルンとした咲季の唇は、風邪のせいか少しカサついていて。
でもこれはこれで良いかもって思ってる俺、ちょっとヤバいかな?


軽く触れ合うキスを繰り返していたら、


「諸星さーん」


ドアの向こうから聞こえた祐太の声に、反射的に俺達は身体を離した。

「おー、どうした?」

「母さんがご飯作ったから諸星さんも良かったらって。あ、姉ちゃんは後でお粥だってよ」

「りょーかい!行くわ!」


「じゃあ、俺ご飯よばれてくるから、咲季はゆっくりしてて」

「うん。…ンっ」

咲季にチュッとキスを落としてから、部屋のドアを開けて祐太と1階に向かう。


「祐太〜お前もう高校生なんだから空気読めよな?」

「え?……あっ!すすすスンマセン!」

「あはは!嘘だよ、ウーソ!」

やっぱり兄弟だなあ、慌てた顔が咲季に良く似てる。


「俺、姉ちゃんのドコが良いのかいまだにわかんないッス」

「お前の姉ちゃん、すげえ可愛いよ」

「そうッスか?料理はまあ役に立つけど、チビだし、すぐテンパるし」

「わかってねぇなあ、そこが良いのに。ま、祐太にも彼女ができたらわかるよ」

祐太は最後までイマイチ納得がいかない表情だったけど、それでも良い。
咲季の良さは俺がわかってるし。俺だけで、十分。


1階で咲季のお母さんの料理をいただいて、祐太とは後で一緒にバスケに行く約束をして、お父さんとはお酒を飲みながら将来の話なんかもした。


ほろ酔いのお父さんに、

『諸星くん、咲季を頼むよ』

って言われて、さすがに飛び上がるほど嬉しかった。

でも、こんなやりとりがあったことは咲季には内緒にしとく。
しばらくは俺の中でとどめておいて、本番はビシッと決めるから。

これだけは、不言実行、かな。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ