[続]初恋cherry.(1〜77)

□53話
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“私、振られちゃったんだ”って言おうとしたら、三井さんと土屋さんが急に焦りだして。


「何泣いてんだお前!」

「咲季チャン、大丈夫?」


「えっ?泣い………」

何のことかわからなくて目元に指を当てると、

「わっ……」

私の目からは涙がこぼれていた。


「わっ!ごめっ!ごめんなさ…何でもないから、っ、何でも、、ひっく…」

何で!?
何で私泣いてるの?



「咲季!?」

お風呂から出てきた諸星くんが、私の様子を見るなり慌てて駆け寄ってくる。


「咲季?どうした?」

「三井お前酔っ払って何かしただろ!」


「バッカ!酔いなんてとっくにさめちまってるよ!」

「話してたら急に泣き出してしもたんよ…」


諸星くんが肩に掛けてあったタオルで私の涙を拭いてくれる。


どうしたんだ私……

早く泣き止まなきゃ。

涙、止まれ!止まれ!


気持ちとは裏腹に、何かのスイッチが入ったみたいに全然涙が止まらくて。


「咲季?咲季?」

諸星くんは顔を覗き込みながら背中をさすってくれる。


「咲季!コラ!泣き止め!俺が疑われるだろーが!」

三井さんも心配してくれてる。

「咲季チャン?あっくんがチューしたろか?」

「土屋、つまんねーこと言うな!」

「だって、涙止まるかもしれへんよ?」

「その時はお前の息の根も止めてやるよ」

「おいおい、諸星目がマジすぎんだよ」

「大チャンおっかないわ〜」



「…っ、ふふっ」


「「「あ」」」


皆の相変わらずの会話に、泣くのも忘れて吹き出してしまう。

「ふふっ、ごめんね、慰めてくれてたのに……おかしくて、あははっ」


「咲季もう大丈夫?」

「咲季チャン泣き止んで良かったわ〜やっぱり女の子は笑っとる方が可愛いよ?」

「土屋、お前よくそんな歯の浮くようなセリフ言えるな…」





「馴れ初め!?」


場が落ち着いてから、諸星くんに改めて何があったか聞かれて…

また皆で机を囲んでいた。


「そう。どっちから告白したん?って聞いてたんよ」

「で、何で咲季は何で泣いたんだ?」

三井さんが早速核心をつく。


「う……ごめんなさい…えっと、私、勢いで告白したとき、、振られちゃって…」

多分その時のことを思い出して、お酒も入ってたから感情的になって泣いちゃったんだと思う…


「えー!大チャン咲季チャンのこと振ったん!?サイテー!」

「うるせえよ!あの時はインターハイ前でバスケのことしか考えられなかったんだよ…」

諸星くんが何とも複雑な表情を浮かべながらバツが悪そうに話す。


「じゃあ何で付き合うことになったんだ?」

またもや三井さんが話を進める。

三井さんってハッキリしてるよなあ。
ちょっと見習いたいよ。


「今度は俺の方が好きになって告白したんだよ」


「告白されて意識するようになった、みたいなやつ?大チャン結構ベタなタイプなんやね〜」

「ベタで悪かったな……体育祭のときにフォークダンスがあって、咲季が他の男と手繋いで楽しそうに話してるの見たらイラッときたんだよ……だから、ああ好きなんだなーと思って……あーっ!ちゃんと話したからもう良いだろ!」

諸星くんが頭をガシガシと掻きながら話を終わらせた。



そう、だったんだ……

体育祭のフォークダンスで誰と話したかなんて正直もう覚えてないけど、その男の子に感謝しなきゃ。

だって、その人とたまたま話してなかったら諸星くんと付き合えてなかったってことだもんね。



沢山の偶然が今の幸せに繋がってるんだと思うと、私に関わる全てが愛しく思えてくる。

私、幸せ者だ。

すっごく、幸せ。

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