[続]初恋cherry.(1〜77)

□51話
1ページ/1ページ

プロチームから話がきてる……?

諸星くん、プロになるの?


初めて耳にした話がとんでもなく大きなことで、私は驚きを隠せないでいた。


「ごめん、ビックリしたよな?」

諸星くんが少し困ったように笑いながら、私を見下ろす。


「うん…初めて、聞いたから……」


諸星くんの将来のことだから、私がどうこう言う権利なんかない。
むしろ、諸星くんが大好きなバスケを続けてくれることは私もすごく嬉しい。

しかもプロなんて……

彼の可能性は、私が思っていたよりも遥かに大きかったみたいだ。



「咲季、まだ時間大丈夫だったら公園行かない?」

「公園?」

「うん、愛和の近くの公園」



初デートで一緒にバスケをした公園。

諸星くんが引退してからもよく一緒に来たなあ。


バスケットリングに、ベンチ。

懐かしい…



公園に着いて、ぼんやり辺りを見渡していると

「ベンチ、座ろっか?」

諸星くんがベンチを指さす。


「うん」

さっきの話の続きをするんだろうなって、表情でわかった。




「さっき藤真が言ってたけど、俺、プロチームからいくつか話もらってるんだ」

「うん」

「その中に愛知のチームもあって……」

「えっ、愛知もあるの!?」

それって、諸星くんが愛知に戻ってくるかもしれないってこと!?


「うん。でも、まだどのチームに行くか決めかねてて……地元を強くしたい気持ちもあるんだけど、他も良いチームだから迷ってるんだ」

「黙っててゴメン。決める前に言って変に期待させたくなかったから、言い出せなかった…」


そっか……そうだよね。

話を聞いたら、愛知に来てほしいって思っちゃうもんね。

だって、現に今、思ってるし。
諸星くんが愛知のチームに決めてくれないかなって…


「咲季は、この話聞いてどう思った?」

「…諸星くんの将来のことだから、、私が口出しなんてできないよ…」

私の一言で何かが変わるなんて思ってないけど、諸星くんを困らせるのだけは嫌だ。

愛知に来てほしいなんて、私のワガママだもん。

今だって遠距離してるじゃん。
大丈夫、大丈夫だよ…


「咲季さ、前に俺に言ってくれたじゃん、“我慢しなくて良い”って」

「だから、咲季も俺に遠慮とか我慢とかしないでよ」


諸星くんは私の手を握って、

「教えて?」

優しく問いかける。


「…わ、私は、諸星くんの近くに居たいい。だから、愛知に来てくれたら良いのにって、、思った」

「あと……やっぱり、諸星くんの口から聞きたかったな…」


声が震えたけど、言えた。自分の気持ち。

諸星くん、どう思ったかな?

ワガママって思った、かな…


うつむいたまま顔が上げられないでいると

「…良かった。“どこでも大丈夫”ってアッサリ言われたら寂しいなって思ってたからさ…ちょっと安心した。ゴメン、俺すげえ勝手だよな」

頭をクシャっと撫でられた。


「そんなこと、言う訳ないよ…遠距離、やっぱり寂しいから……」

「俺も寂しいよ。ずーっと一緒にいれたらなーっていつも思ってるもん」



「でも、バスケのことは絶対妥協したくないから…だから、もうちょっと考えてみたいんだ」

「うん、応援してるね。私も来年から就活だし頑張らなきゃ」


先のことはまだまだわからないけど、私も諸星くんに負けないように頑張ろう。

いつまでも諸星くんの隣に居られるように。



「なあ咲季?」

「ん?」

「今日さ、藤真のこと良いなって思った?」

「えっ?」

「あいつ、中身はともかく顔は良いじゃん?だから咲季もクラッときたかな〜って」


いきなりの質問にキョトンとする私に

「あ、もしかして牧派?あいつ老けてるけど大人だもんなあ…」

腕を組みながら、ああでもないこうでもないって、諸星くんがつぶやいてる。


「藤真さんも牧さんも素敵な人だったけど、私は諸星くんだけだよ?」


諸星くんに心配してもらえるなんて、私すごく贅沢だ。

私は、ずっとずーっと、何年間も諸星くんにしかときめいてないよ。

だって、誰より1番格好良いって思ってるんだもん。

だから…

「心配、しないでね?」


「ううん」


「えっ!?」

思いもよらない返事に驚いていると

「…っ!」

諸星くんが顔を至近距離に寄せてくる。


「安心、させて?」


これって……

「ひっ、人が…」

「いないよ」

「っ、でも…」

「ほら、ん?」

諸星くんが目を閉じて催促する。


まつげ長いなあ。

ああ、目を閉じてても格好良い…


恥ずかしくてたまらないけど、おねだりする諸星くんが可愛くて…

ほんの少し触れるだけのキスをした。


「安心、、した?」

「した!でも……」


「寄り道して帰ろ?」


満足そうに笑う諸星くんの手を握って、コクンと頷いた。


「ここでの思い出、1個増えたね?」


これからも、2人で色んなことを乗り越えて、たくさんの思い出を作っていこうね。

大好きだよ、諸星くん。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ