[続]初恋cherry.(1〜77)

□49話
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「なあ、愛和学院行こうぜ」


食事を終えて雑談していたら、藤真さんが提案してきて。


「愛和ならお盆でも部活やってんだろ?」

「藤真、急に行ったら迷惑だろう」

「良いよ。お前らなら監督も喜ぶだろうし。咲季、良い?」

「うん!卒業以来だから久しぶりだなあ」

「俺も。よしっ!可愛い後輩に喝入れに行くかあ!」



早速お会計を済ませて4人で愛和学院に向かった。




「よし着いた!うわーすげえ久しぶり!」

「わあ〜懐かしいね」


ほんと、懐かしい。

諸星くんと出会った愛和学院。
高校時代のこと、色々思い出すなあ。

歩きながらぼんやりと思い出に浸っていたら、頭をクシャっと撫でられた。


「懐かしいね?」

諸星くんが優しく笑って私を見下ろす。

「うん!」

同じ思い出があるって、素敵だなあ。

やっぱりここは、私にとってすごく大事な場所だ。



「愛和の校舎デケーな。さすが私立」

「俺達も私立だったじゃないか」

「まあそうだけどよ。諸星、体育館どこ?」

「ああ、こっち」


体育館へ近づくにつれて、ドリブルの音や部員の声が響いてくる。


「おーやってるやってる!」


「チュース!」


諸星くんの声に、部員の人達が一斉に注目する。


「諸星!」

「監督、お久しぶりです」


「諸星先輩!」

「すげえ!諸星先輩だ!」

「ちゅーす!」


「神奈川の牧さんじゃね?」

「翔陽の藤真さんだ!すげーイケメン!」


監督さんをはじめ、部員の皆が3人に気付いて体育館がザワつく。


すごい…皆、諸星くんだけじゃなくて牧さんと藤真さんのことも知ってるんだ…

それに諸星くんだって、今居る子達は直接の後輩じゃないのに。

こういうの見ると、諸星くんってやっぱり有名人なんだなあって実感する。


はじめは体育館の隅に座って部活の様子を見学していたんだけど、休憩に入るやいなや


「俺達もやろうぜ!」

藤真さんが立ち上がった。


「気持ちはわかるが、バッシュがないだろう」

「じゃあフリースロー対決しようぜ」

「お!諸星ナイスアイデア!」

「最下位はジュース奢りな」



バスケをしてる姿を見て3人共ウズウズしてきたらしく、フリースロー対決をすることになった。


「咲季、俺絶対勝つから見てて」

「うん!応援してるね」


「咲季ちゃん、俺のことも応援してよ?勝ったらごほう…びっ!イテッ!痛ぇよ諸星」

「ふっ、藤真さんも頑張ってくださいね!」

「牧さんも!応援してます!」

「ああ、ありがとう」


部員の皆も休憩どころじゃなくなったみたいで、3人の周りに集まって目をキラキラさせている。


対決の内容は、順番にフリースローを打って、先に10本成功した人の勝ち。


始まってから、3人が数本ずつ打ち終わった頃には私の口はポカンと開いていた。

だって、3人共ほとんど外さないんだもん。ビックリだよ…

今日は私服だし、バッシュだって履いてないのに。

やっぱり全国の常連のプレイヤーなだけあって、センスが違うんだろうなあ。

周りで見ている部員の子達も食い入るように見ながら、シュートが決まるたびに『おお〜!』とか『すげー!』とか感嘆の声をあげている。



「10本、成功したぞ」

最初に10本成功したのは牧さん。

すごい……でも当の本人は涼しい顔をしてる。

私と同い年なのに、この落ち着きはどこからくるんだろう。



「クッソー!牧!老け顔のくせに!」

藤真さんが悔しそうに悪態をつく。

顔は関係ないと思うけど……それでも牧さんは涼しい顔。大人だなあ。


「俺次で10本目〜」

諸星くんがシュート体勢に入ろうとしたとき、


「ねえ咲季ちゃん」


藤真さんが話しかけてきて。

「はい」

「ちょっと耳かして」

「?はい」

藤真さんに少し近寄ると


「何でもない」


耳元でささやかれた。

「えっ!?」

どういうこと?


ガンッ!

「あ゛ーーーっ!!!」


リングがボールを弾く音と諸星くんの絶叫が聞こえて、慌てて目線をやると

「くっそー!外れたー!」

悔しがっている諸星くんの姿。


「ぎゃははは!」

私の隣では爆笑している藤真さん。


「藤真!さっきのワザとだろ!咲季にベタベタしやがって」

「甘いな。あのくらいで動揺するやつが悪い」

えっ!?もしかして私、利用されちゃったの?
うぅ…諸星くんごめんなさい…


結局、先に10本成功したのは藤真さんの方で。

「俺の勝ち〜!諸星がジュース奢りな!」

藤真さんは今にも踊り出しそうなくらい喜んで、諸星くんは納得いかない表情を浮かべていた。

その隣では

「藤真、大人げないぞ…」

呆れたようにため息をつく1位の牧さん。



「あの、諸星先輩…」

「おっ、何?」

周りで見ていた部員の1人が、諸星くんに話しかけてきて。


「俺っ!諸星先輩に憧れて愛和学院に入ったんです!」

「おぉ!そうかそうか!頑張れよ!」

「良かったら、1対1のときのフェイクのコツを教えて下さい!」

「!」


「あの!俺、牧さんみたいなPGになりたいんです!それで……」

「藤真さん、俺もサウスポーなんですけど、シュートのときって……」


次々に飛び交う質問に、3人は丁寧に答えている。

何だかすごくイキイキしてるなあ。

リーダー気質っていうのかな…牧さんも藤真さんも高校のときにキャプテンだったらしいし、諸星くんもそうだし。


あ、そうだ、今のうちにジュース買って来ようかな。

良いもの見せてもらったし、今日仲良くしてもらったお礼も兼ねて私が奢ろう。



えーっと、自販機は確か体育館の外に…


……ううん、やっぱりあそこに行こう。

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