◆Aroom

□kiss me///kiss you
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……多分、

多分なんだけど、


今、降谷くんはキスがしたいのかな、と思う。




後輩の降谷くんと付き合い始めたのは最近のこと。


先に好きになったのは私の方だった。

正直に言うと、顔が好みだったから。

あのサラッとした顔立ちと雰囲気がめちゃくちゃタイプだった。もう、どストライク!

好きだって自覚してからは、
練習を見に行ったり、試合の応援に行ったり、とにかく降谷くんの視界に入りまくった。

練習が終わったらタオルを渡して、ドリンクや食べ物の差し入れもした。


そしたら、この差し入れ作戦が効果絶大で。


降谷くんは無口で、あんまり自分の感情を表に出さないんだけど

差し入れをしたときは、何て言うのかな……表情が、ほくほく?そう、ほくほくするの。

それに気を良くした私は差し入れをしまくった。
毎日、差し入れにつぐ差し入れ。差し入れ祭り開催中ー!って感じで。

同じ学年の御幸くんや倉持くんとはほとんど話したことがなかった私だけど、勇気を出して降谷くんの好きな物を聞いたりして。

『シロクマが好き』って情報を聞いたときは、半信半疑でシロクマの小さな置物をあげたら、

降谷くんは『ありがとうございます』って淡々とお礼を言ってから、スキップして帰って行った。

その後ろ姿は今思い出しても笑えて仕方ない。
(ちなみにそのシロクマの置物は彼の机の上に飾ってある。イェイ!)


差し入れを渡すときだけじゃなくて、もっともっと降谷くんと話したい!会いたい!って気持ちが爆発して


『もっと大好きな降谷くんのことが知りたいので付き合ってください』

って告白したら


『差し入れも嬉しいですけど、僕は先輩が練習を見に来てくれることの方が嬉しいです』

だって!ふふふふふふ


というわけで、降谷くんとお付き合いすることになった。


手は繋いだ。
(先輩が逃げたら嫌なので捕まえときます。だって!キャッ!)

ギュウもした。
(先輩は良い匂いがするのでずっとこのままが良いです。だって!キャーッ!)



で、今。


見てる、すごく。

降谷くんが、私を。

私の、唇を。


降谷くんは自分の気持ちを口に出すことが苦手だ。

でも行動やオーラ?で考えてることは結構わかる。


「…降谷くん?」


「……名前先輩…」

「ん?」


「…キス、しても良いですか?」


「うん、良いよ」

ほら、当たり。やっぱりね。

降谷くんの思ってることを当てれたら、すごく嬉しい。
彼のことを理解してるって、彼女として合格な気がするから。


「それで、ちょっと質問なんですけど、」

「うん、何?」

これからキスするのに、質問?


「キスするときって、まず名前先輩が目をつむりますよね?」

「うん、まあ…」

「僕が目をつむるのは、唇が触れてからですか?触れる前ですか?」

「それは、降谷くんに任せるよ?」

「もし先に目をつむって、唇がピッタリ合わなかったら格好悪いですよね」

「ああ、うーん、それはそうかも」

「じゃあ唇が触れてから目つむります」


まさかこんなことを質問されるとは……

でも、真面目に考えてくれてるからだよね。可愛い、降谷くん。


「首は傾けた方が良いんですか?」

「首?首も、自由だよ?」

「顔をまっすぐにしたら鼻と鼻が当たるかもしれませんよね」

「う、うーん」


「傾けるのは右と左のどっちが良いですか?」

「僕の手は、そのままですか?先輩の頬に添えますか?」

「息は止め………っ!」


珍しく饒舌な降谷くんからの質問は永遠に続きそうな勢いで。

そんな彼にしびれを切らした私は、思いっきり背伸びをして

降谷くんの唇に触れるだけのキスをした。


「降谷くんとだったら、どんなキスでも嬉しいよ?」


唇を離してそう伝えると


「……キスって、柔らかいんですね…」


ポカン、って顔をした降谷くんがボソリと呟いた。


あ、でも、ほっぺが赤い!ほくほくしてる!
ふふ、やったね!



ねぇ、降谷くん、


今度は、降谷くんからキスしてね?

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