ウチとボク
□15話
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大学４年の夏
「いらっしゃいませー！」
ウチはオトンのお店に出といた。
あっちゃんが来るかもしれんって、ちょっとだけ頭の中にあった。
「こんにちは〜」
「おー！あっくん！いらっしゃい」
「あっちゃん、いらっしゃい」
「名前チャン、久しぶり」
「うん、去年会わんかったもんな」
「せやね」
あっちゃんの座るカウンターに水の入ったグラスを置く。
そん時にちょっとだけ話す。
今年も、そんだけ。
あっちゃんはオトンとオカンと話しながらお好み焼きを食べて
ウチは常連のオッチャンと話しながらテーブル拭いたりしとった。
「名前っ！」
「はいよー」
オトンに呼ばれて駆け寄ると
「名前！コーラ買うてきてくれ！」
「は？コーラ？」
「急にコーラの気分になってん！コーラ飲まんと働けん！頼む名前！」
「うん、まあ、エェけど…」
何で急にこんなこと言うんやろって思いながらも、働いてもらわな困るから小銭を握りしめて店を出る。
「ほんなら、あっちゃん、またね」
「うん、またね名前チャン」
これで、今年あっちゃんを見るんは終わりやな。
年に１回だけ、会うか会わんか。
次の約束はもちろんない。
来年のことなんか、何にもわからん。
ウチにも、、多分あっちゃんにも。