ウチとボク

□13話
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今年は名前チャンが店におらんかった。


2年も連続で会うたんは偶然や。わかっとる。



「あっくん!シーフードお待ち!」

「オッチャンありがとう」



「今日、名前チャンは?」

「ああ、名前は彼氏とデート行ってんねん」

「あ…そうなんや」

「今日の化粧はごっついマツゲやったで〜ラクダか!いうくらいの!」



そうか……彼氏できたんやな。

いや、ボクが知らんだけで今までもずっとおったんかもしれん。



「昔はあっくん一筋やったのになあ〜!」


オッチャンの言葉にポカンとするボクに


「あ、ゴメンな、もう時効かと思ってな」

「はは、そうですね」


そうや。

もう、時効や。

5年も前のことやもんな。



「ガサツな名前にあっくんみたいな男前は勿体無いわな〜」

「そんな、ボクなんか全然や」



ホンマ……

全然や、ボクなんか。


肝心なことから逃げた、ズルイ奴や。



ボクはな、名前チャンと一生一緒におりたかった。


あの時は15、6の子供やったけど、

ホンマに、ホンマに、

本気でそう思っといたんよ。






「オッチャン、ボクな」



「名前チャンより好きな子、でけへんみたいや……」



「……あっくん…」


「でもな、名前チャンが幸せやったら、ボクも幸せや」




ボクにはバスケがある。

それでエェ。






「花火大会?行ったよ。後は牧と藤真に会った」

「ふぅーん」

「三井クン、お盆にエェ事あったん?」

「バッ!何もねぇよ!」

「土屋は?」

「んー、去年と同じ、かな?」

「“かな”って何だよ、“かな”って」



同じやけど、ちょっと違う気もすんねん。

ちょっとだけ、素直になれた…かな。

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