ウチとボク
□7話
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大学2年の夏、またあいつがやって来る。
「こんにちは〜」
「おぉ!あっくん!去年振りやなあ〜」
「オッチャン、今日はモダン焼きにするわ」
「よっしゃ!待っててや〜」
ウチが店の手伝いする日は正直そこまで多くない。
普段は大学もあるしバイトもしてるし、今は夏休みやからたまたま店に立つことが多いだけ。
今日もホンマにたまたまで。
冬休みも春休みも、あっちゃんが店に来たかどうかはわからん。
でも夏に会うんは2回目。不思議や。
「名前チャン、元気?」
「うん、元気。あっちゃんは?」
「ボクも元気でやっとるよ。バスケもレギュラーとれたし」
「わ、すごいやん」
去年の夏振りに話すあっちゃんは、更に洗練されたっていうか、格好良くなっといた。
昔から背ぇ高くてシュッとしといて優しくて女子に人気やったあっちゃん。
たった数年でも自分だけの彼氏だったなんて、ちょっと信じられへん。
「名前チャン、良かったら試合観にきてや」
「東京に?遠すぎやん」
「大チャンのカノジョは愛知からいっつも来てくれてん」
「……だってウチ、大チャンも大チャンの彼女も知らんもん」
「大チャンはイケメンさんやで、あと三井クンもキリッとしとるし。大チャンのカノジョはな〜、恋する乙女チャンって感じやな」
バスケのことを楽しそうに話すあっちゃんの表情は昔とおんなじや。
ウチの知っとるあっちゃん。
さっき、とっさに口に出そうになった
“だってウチ、彼女やないもん”
って。
こんなん言うたら気まずくなるってわかっとる。せやから言わんし、言えん。
言うてどうこうなるモンでもない。
今はウチもあっちゃんも、お互いを幼馴染やと思っとる。
ただ、
嘘でも、社交辞令でも、試合観に来てって言ってくれたんはメッチャ嬉しかった。