[続]初恋cherry.(1〜77)

□34話
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諸星くんの家で晩ごはんの支度をしながら、1人悶々と考えていた。


さっき体育館に居た女の子の事が、頭の中をぐるぐる、ぐるぐる。



私は諸星くんの彼女なんだから!自信持たなきゃ!

なんて…強気な自分がいる反面、


諸星くんも遠距離でなかなか逢えない私より、近くでいつもそばに居てくれる子の方が良いのかもしれない…

って思ってしまう弱気な自分も確実にいる。


諸星くんが私のことを好きでいてくれていることは、すごくよくわかる。

毎日連絡をくれて、逢えたときは全力で愛してくれて…

今だって、合い鍵で部屋に入ってご飯を作って待ってるなんて、すっごく幸せなことで。

これで不安になるなんて言ったらバチがあたるよ。


きっと、諸星くんと順調に付き合えていることでいつの間にか私の中の危機感が薄れてしまっていたんだ。

だからこんなちょっとしたことで落ち込んでしまって。

こんなの、慣れっこだったハズなのにな…


ごはんの支度を終えてぼんやりしていたら、諸星くんが帰ってきた。


「咲季ただいま、おっと!」


私は小走りで諸星くんの元に向かって、そのまま彼の胸に飛び込んだ。

「おかえりなさい…っ」

「っ、おっと、どした?」


ここは諸星くんの家なんだから諸星くんが帰ってくるのは当たり前なんだけど、何だか、心底ホッとした。

ギュウっとしがみつく私を不思議そうに見下ろした諸星くんは、私の頭を優しく撫でてくれる。

諸星くんの匂いがする…
ああ、落ち着くなあ。


「っ、ごめんね。何でもないから…」


すごく恥ずかしいことをしているって気がついた私は、諸星くんからパッと離れて笑顔を作った。


「そう?こういうのならいつでも大歓迎」

「〜〜〜っ!ごっ、ごはん!食べよっか!」




今日の晩ごはんはトンカツ。

ベタだけど、試合に勝ってもらいたいから、その願いを込めて作った。


諸星くんは“縁起良いな〜”って喜んで食べてくれて。

おいしそうに私が作ったトンカツを頬張る彼を見ていたら、モヤモヤした気持ちはどこかに飛んでいってしまった。

我ながら単純すぎて呆れるけど、今目の前に諸星くんが居るっていう幸せは紛れもない事実だから。


諸星くんが好き。

それだけで十分なんだ。

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