[続]初恋cherry.(1〜77)

□31話
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……諸、星くん?


私達の会話に入ってきたのは、東京に居るはずの諸星くんで。



「はァ、何で薬学部に居ねえんだよ、はァ、すげえ、探しただろうが…っ」


息を切らして途切れ途切れに話す諸星くんを、私はただ見つめていた。


何で、諸星くんがここに居るの?
諸星くんは東京に居るはずなのに……何で?

全く状況がつかめない。



「っ、はァ、南、咲季は俺のだからな。チョッカイ出すなよ」

「…別に、まだチョッカイ出してへんし」


「とりあえず手!手ぇ離せよ」
「…!」

私は南さんに掴まれていた手を慌てて振りほどく。

諸星くんが現れたことにあまりにも驚いて、手を掴まれていたことなんて正直頭から消えていた。


「南、俺達はこれから先も別れることなんかねえし、別れるつもりもねえ」

「そんなん、わからんやろ。人の気持ちなんかいくらでも変わんねん」

「変わんねえよ!俺も、咲季も変わんねえ!」


「この子の気持ちはこの子が決めることやろ」




「なあ、アンタはどうしたい?」

「今すぐじゃなくてもええ、これから、俺のことも見てくれへん?」


南さんが私の目をまっすぐ見て
話す。

まさかこんなことになるなんて思わなくて、頭の中はパニックのままだけど、

だけど………



「わ、私……私は、諸星くんのことずっとが好きで、」

「今付き合えてることが夢なんじゃないかって思うくらいで…」

「すごく、すごく幸せだから、これからも諸星くんと一緒に居たいんです」

「だから、ごめんなさい」


今日2回目のごめんなさいを伝えて頭を下げた。

心臓はバクバク波打って、手は震えてる。

恐る恐る頭を上げると



「まあ、今日はええわ」

「元々すぐにどうこうしようとは思ってへんし」


「諸星」

「何だよ」


「今お前らの邪魔はせえへん」

「ただ…この子が悲しむようなことがあったら、そん時は遠慮せんからな」

「おう、わかってるよ」



「あんたには迷惑かけたな…まあ、同じ大学やし、会ったら挨拶くらいはしてや?」

「はい。ほんとに、ごめんなさい。あと、ありがとうございました」

「ん。ほなな」


南さんは最後まで無表情のまま淡々と話し続けて、行ってしまった。


その場に私と諸星くん2人になって


「諸星くん、何で!?大学は?……あっ」


諸星くんは無言のまま私の腕を掴んで歩き出した。


「ちょっ、あの…諸星くん?」



「俺ん家、行くから」

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