[続]初恋cherry.(1〜77)

□30話
1ページ/1ページ

4日後……私は朝一で薬学部へ向かった。

南さんに告白の返事をするために。



告白を受けてから今日までの間、諸星くんとはいつも通り連絡を取り合っていたけど、お互いが少しぎこちないように感じた。

無理もないよね。
告白されて、返事もせずに居て、何もなかったみたいに気持ち良く会話なんてできないと思う。


だから今日は、ちゃんと南さんにお断りするんだ。

私なんかに好意を持ってくれたことは素直に嬉しかったけど、でも、私は諸星くんが好きだから。諸星くんしか見えてないから。

“ごめんなさい”って、誠意を持って伝えよう。



薬学部を覗くと、窓際の席に南さんが座っているのが見えた。

良かった…南さん居る。


違う学部に入るのって少し緊張するけど、南さんの元へ足を向かわせる。

南さんは肘をついて窓の外を眺めていて、私が近付いていることには全く気がついていない。


「南さんおはようございます」

声をかけると南さんの肩がピクリと小さく跳ねた。


「…あぁ、アンタか…」

「あの、ちょっとお時間大丈夫ですか?」

「……ええよ」

「場所、移動しても良いですか?」

さすがにここでは話せない。

南さんは無表情でコクンと頷いてから、私の後ろをついてきてくれた。


薬学部の敷地を出て、学食の近くまで歩く。

朝一だから学食付近には人もまばらで、話をするにはちょうど良いと思って。

歩みを止めて南さんと向き合うなり、私は口を開いた。


「あの……この間の返事なんですけど、、ごめんなさい」


誠心誠意、心を込めて伝えてから、ペコリと頭を下げた。


「…………」


南さんは無言のまま私を見ている。

私は返事を伝えたんだけど……相手が何も返してこない場合はどうすれば良いのかな?


「あの……」
「そら、まあ、そうやろ」

「えっ?」


南さんが発した言葉の意味がわからない。


「それってどういう…?」

そう聞くしかなかった。


「アンタ、今は愛知の星と付き合うてるんやろ?そら、無理やろな」


???

ダメだ……ますますわからない…

あれは告白じゃなかったってこと?

また頭の中でクエスチョンマークが飛び回る。

南さんと出会ってから、私は一体何個のクエスチョンマークを飛ばしたことか……



「ハナから1日2日でどうこうしようとは思ってへん」

「たまに一緒にメシ食うて話したりして、俺のことエエな思うたら俺のとこに来たらええ」


「っ、でも…」


そんな思わせぶりなことできないよ。

だって私は…

「あっ…」

「なあ、アカン?」

南さんが私の手を掴んで顔を覗き込む。


「俺にも…チャンスくれへん?」



「そんなチャンスねぇよ」

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ