[続]初恋cherry.(1〜77)
□30話
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4日後……私は朝一で薬学部へ向かった。
南さんに告白の返事をするために。
告白を受けてから今日までの間、諸星くんとはいつも通り連絡を取り合っていたけど、お互いが少しぎこちないように感じた。
無理もないよね。
告白されて、返事もせずに居て、何もなかったみたいに気持ち良く会話なんてできないと思う。
だから今日は、ちゃんと南さんにお断りするんだ。
私なんかに好意を持ってくれたことは素直に嬉しかったけど、でも、私は諸星くんが好きだから。諸星くんしか見えてないから。
“ごめんなさい”って、誠意を持って伝えよう。
薬学部を覗くと、窓際の席に南さんが座っているのが見えた。
良かった…南さん居る。
違う学部に入るのって少し緊張するけど、南さんの元へ足を向かわせる。
南さんは肘をついて窓の外を眺めていて、私が近付いていることには全く気がついていない。
「南さんおはようございます」
声をかけると南さんの肩がピクリと小さく跳ねた。
「…あぁ、アンタか…」
「あの、ちょっとお時間大丈夫ですか?」
「……ええよ」
「場所、移動しても良いですか?」
さすがにここでは話せない。
南さんは無表情でコクンと頷いてから、私の後ろをついてきてくれた。
薬学部の敷地を出て、学食の近くまで歩く。
朝一だから学食付近には人もまばらで、話をするにはちょうど良いと思って。
歩みを止めて南さんと向き合うなり、私は口を開いた。
「あの……この間の返事なんですけど、、ごめんなさい」
誠心誠意、心を込めて伝えてから、ペコリと頭を下げた。
「…………」
南さんは無言のまま私を見ている。
私は返事を伝えたんだけど……相手が何も返してこない場合はどうすれば良いのかな?
「あの……」
「そら、まあ、そうやろ」
「えっ?」
南さんが発した言葉の意味がわからない。
「それってどういう…?」
そう聞くしかなかった。
「アンタ、今は愛知の星と付き合うてるんやろ?そら、無理やろな」
???
ダメだ……ますますわからない…
あれは告白じゃなかったってこと?
また頭の中でクエスチョンマークが飛び回る。
南さんと出会ってから、私は一体何個のクエスチョンマークを飛ばしたことか……
「ハナから1日2日でどうこうしようとは思ってへん」
「たまに一緒にメシ食うて話したりして、俺のことエエな思うたら俺のとこに来たらええ」
「っ、でも…」
そんな思わせぶりなことできないよ。
だって私は…
「あっ…」
「なあ、アカン?」
南さんが私の手を掴んで顔を覗き込む。
「俺にも…チャンスくれへん?」
「そんなチャンスねぇよ」